Agentic Enterprise(エージェンティック・エンタープライズ)のテーマのもと、人とAIエージェントが協調し、企業の成功を加速させる未来の姿が具体的に示されたDreamforce 2025もいよいよ最終日となりました。

日本からは1,000人を越える参加者が来場し、イベントへの関心の高さが伺えました。
Day3のレポートでは、「Japan Wrap-up Session」を中心に、のイベントのハイライト、AIエージェントの最新情報、そして業界ごとの活用事例を包括的にご紹介します。
キーポイントの総括:人とAIの協調「Agentic Enterprise」
Salesforceの未来を築く「Agentforce 360」
Dreamforce 2025の中心的なメッセージは、「Agentic Enterprise」です。これは、AIエージェントが単なるツールではなく、人間のエージェント(従業員や顧客)と協力し、企業のあらゆる業務と顧客体験を根本から変革する、というSalesforceのビジョンです。
Salesforce自身が「カスタマーゼロ」として「Agentforce」を導入し、顧客満足度を向上させた成功事例では、Agentforceは、顧客のフィードバックに基づき継続的に改善されており、「製品やアドオンではなく、Salesforceの未来を築く基盤」として「Agentforce 360」へと進化を遂げていると紹介されました。
業界リーダーが語るAIの未来
AIの進化に関する注目セッションでは、業界のパイオニアたちが未来の展望を語りました。
- Dario Amodei氏(Anthropic)は、AIが企業の基幹機能となると予測しました。
- Tekedra Mawakanaco氏(Waymo)は、自動運転技術の安全性を強調し、交通事故の減少への貢献を目指す姿勢を示しました。
- David O. Sacks氏は、AIレースが経済と国家安全保障に影響を与えると述べ、その重要性を強調しました。
また、SalesforceはAnthropicとの戦略的パートナーシップを締結し、AnthropicのLLM(Claude)がAgentforce 360 Platformの基盤モデルとして採用されたことが発表されました。これにより、規制の厳しい業界でもSalesforceの安全な環境内でAIを活用できる道が開かれます。
AgentforceとMuleSoftによる運用管理の進化
AIエージェントの運用・管理をサポート
AIの導入が進むにつれて課題となるのが、運用と管理の複雑性です。Salesforceはこの課題に対し、新しいソリューションを提案しました。
| 新機能名 | 主な機能とメリット |
|---|---|
| Agentforce Vibes | 自然言語の指示からAIがコード生成・テスト・デプロイを支援し、開発効率を大幅に向上。 |
| Agentforce Testing Center | エージェントの精度や信頼性を検証し、AIの誤回答を防止することで、信頼性を担保。 |
| Agentforce Observability | 可視化・最適化・監視を一元化し、ROIの見える化を支援。 |
| Security Mesh | 重要なセキュリティインサイトを可視化し、異常なユーザー活動を自律的に検知。プライバシー規制対応の自動化にも貢献。 |
MuleSoft Agent FabricでAIをオーケストレーション
MuleSoft Agent Fabricは、企業内外のAIエージェントの管理とオーケストレーションを可能にします。複数のAIエージェントやツールを連携させ、セキュリティポリシーを適用することで、複雑なプロセスを円滑に実行できます。
また、MuleSoft Vibesを利用すれば、自然言語でアプリケーションの作成・変更が可能になり、開発・運用管理の効率化が進みます。さらに、MuleSoft IDPは、請求書や契約書などのドキュメント処理に生成AIを活用し、非効率な業務オペレーションを解消し、業務効率化に大きく貢献します。
業界別:AIエージェントが変えるビジネスの現場
Day3のセッションでは、金融、ヘルスケア、消費財などの業界に特化したAIエージェントの活用事例が紹介され、「無限の成長エンジン」としてのAIの可能性が示されました。
金融サービス業界:顧客との関係構築に注力
金融サービス業界では、AIエージェントの数が月105%成長(2025年前半)という驚異的な伸びを示しており、その活用が成長を促進しています。
AIエージェントが事務作業を自動化することで、人間の担当者は顧客との深い関係構築という、より価値の高い業務に集中できるようになります。また、住宅ローンや融資領域では、AIが顧客のニーズを先読みし、商談を自動化することで、顧客体験の向上と成長を目指します。
ヘルスケア業界:医療従事者の負担軽減とケアの質の向上
労働力不足に直面する医療業界では、AIが強力なソリューションとなります。
- Agentforce Care Orchestrationにより、患者のケアにかかる事務手続きの時間を短縮。
- CVS Healthの事例では、AI活用により看護師の生産性が90分向上。
- 医師の81%が生成AIが患者とのやり取りを改善すると考えており、医療機関の生産性は40%向上、患者の待ち時間も30%短縮されたというデータも紹介されました。
Agentforceは、患者が適切な病院を見つけ、予約、薬の処方依頼までをサポートし、医療機関へのアクセスを簡素化することで、「フリクションレスな患者体験」を実現します。
消費財業界:収益性の高い成長の実現
消費財企業は、Agentforce 360を活用してチームやデータのサイロ化を解消し、収益性の高い成長を目指します。
AIエージェントは、販促効果を高めるための具体的なプロモーション提案を行い、訪問効率を向上させることで、投資対効果を最大化します。また、広告業界では、提案書の自動生成を数分に短縮し、リアルタイムデータに基づくキャンペーン最適化により、広告主へのROIを最大化する変革が進行中です。
サステナビリティへの貢献と次なる一歩
Salesforceは、サステナビリティへの取り組みも強化しており、「1兆本の木を保護、再生、育てる」という目標を掲げています。AIは、エネルギー使用量の最適化や温室効果ガスの削減、サステナビリティ報告の効率化など、環境問題へのプロアクティブな対応を支援する強力なツールとして位置づけられています。
Dreamforce 2025を振り返って

「Agentic Enterprise」という新たなステージへと進むSalesforceのエコシステムは、私たちのビジネスに変革をもたらす可能性に満ちています。
最後に、来年のDreamforceの日程が発表されました。Dreamforce 2026は、2026年9月15日(火)から17日(木)の期間で開催予定とのことです。来年もまた、新たなイノベーションをサンフランシスコで目撃することになるのでしょうか。
3日間のレポートでご紹介したAgentforceの新機能や業界別の活用事例について、今後のビジネスにどのように応用できるか、個別にご相談を承ることも可能です。ご興味のある分野や具体的な課題がございましたお気軽にご相談ください。
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