カスタマーサービスに特化したSalesforceの生成AI機能 『Einstein GPT for Service』とは !?
技術コラム
CSに特化したSalesforceの生成AI機能 『Einstein GPT for Service』とは !?
2022年11月30日に生成AIを用いた対話型サービス「Chat GPT」が公開されて以降、“生成AI”という単語は一気に広まりました。Salesforceは、このChat GPTの技術と同社のAIモデルを統合させたCRM向けの生成AI「Einstein GPT」を発表しました。パーソナライズされたコンテンツを生成し、セールス/サービス/マーケティングなどあらゆる業務のスピードを改善出来るとしています。
今回はカスタマーサービスに特化した「Einstein GPT for Service」で利用出来る機能を紹介いたしますので、実際のシナリオを想定しながら、ぜひ利用イメージをつかんでください!
目次
「Einstein GPT for Service」とは
そもそも「Einstein GPT」って何?
前述の通り、Einstein GPTとはChat GPTの技術とSalesforceが所有するプライベートAIモデルを組み合わせた、世界初のCRM向け生成AIです。Salesforceで管理している顧客情報やData Cloudで連携したリアルタイムデータなど、企業が保有する全ての顧客データを取り込み、一元化した上で、パーソナライズされたコンテンツを生成します。
例えば、営業担当者が顧客に送るメール文面をEinstein GPTが作成します。送信先となる顧客データに基づいて最適化されたメール文面が作成されるので、営業担当者は確認し送信するだけになります。今までのように、各顧客に合わせた文面をゼロから作成する手間がなくなり、営業担当者は最重要任務であるセールス活動に注力することが出来ます。
他にも、マーケティング分野ではイベントやキャンペーンの反応率を向上させるためのコンテンツ作成や、開発者向けにプログラムコードを自動生成したりと、幅広い活躍をすることが出来る生成AIです。
「カスタマーサービスに特化」ってどういうこと?
顧客へのメール作成のように営業活動に特化した機能が「Einstein GPT for Sales」、顧客をサポートすることに特化した機能が「Einstein GPT for Service」です。一言で「顧客をサポート」と言っても、多くの業務が考えられます。質問に対する回答、解決後の情報整理、ナレッジ記事の作成、オペレーション品質の向上、教育、引継ぎなど、サポート担当者は大忙しです。これら全てのカスタマーサービス業務において、生成AIの力でサポート担当者を支援することが出来るのが「Einstein GPT for Service」です。
サポート担当者のメイン業務「顧客の質問に対する回答」で実用例を考えてみましょう。
担当者は、質問に対して具体的な回答をするために、適切なナレッジを発見/理解した上で文面を作成することが必要です。さらには、顧客を待たせることなく迅速に回答しなければなりません。担当者は「回答精度とスピードの両立」という難題に取り組まなければなりません。
しかし「Einstein GPT for Service」であれば、生成AIが質問の内容を理解した上で最適なナレッジを見つけ出し、それに基づいた回答文をサポート担当者に提案してくれます。サポート担当者は提案された文章を確認し、問題なければそのまま送信することが出来るため、迅速に顧客の疑問を解消することが出来ます。もちろん、AIの文章をサポート担当者が編集し、回答を強化することも可能です。
このようにカスタマーサービスに特化した生成AIは、サポート担当者の生産性を向上させます。そして、精度と速度のバランスが取れた回答が返ってくるため、顧客の利用満足度も向上させます。両者がハッピーな気持ちになれるよう、生成AIという新しい従業員がカスタマーサービスをサポートします。
Einstein GPT for Service機能のご紹介
ひとまず、忙しい方向けに今回紹介する機能について、ざっくりと内容をまとめてみました!
Service Replies for Chat
- 顧客とのチャットに適した返信や回答を提案してくれる
- ソース:ナレッジ、AIの事前学習データ
- Spring ’24時点の日本語対応:○
Service Replies for Email
- ケースへの返信メールに適した返信や回答を提案してくれる
- ソース:ナレッジ、過去のケース、AIの事前学習データ
Spring ’24時点の日本語対応:×※2024年3月14日より日本語対応済み
Reply Recommendations
- 顧客とのチャットに適した適した返信や回答を、過去のチャット内容に基づいて提案してくれる
- ソース:過去のチャット
- Spring ’24時点の日本語対応:○
Work Summaries
- 顧客と会話した内容を要約してくれる
- ソース:完了した会話
- Spring ’24時点の日本語対応:○
Midconversation Summaries
- 会話に途中参加した担当者向けに内容を要約してくれる
- ソース:途中の会話
- Spring ’24時点の日本語対応:×
これだけでは詳細までは分かりませんので、以下で各機能を丁寧にご説明しておりますので、「Einstein GPT for Service」の利用イメージをより明確につかんでください。
Einstein Service Replies
一言で言うと、「顧客からの問い合わせ(質問)に適した返信や回答を提案してくれる」機能です。
「カスタマーサービスに特化」ってどういうこと?の実用例でご紹介した通り、顧客からの質問内容に対しての回答が提案され、サポート担当者はそのまま返信することが出来る機能です。
この機能には、チャット返信用の「Service Replies for Chat」とケースにおけるメール返信用の「Service Replies for Email」の2種類があります。基本的な機能は変わりませんが、チャット用の機能は組織内のナレッジを基に生成し、メール用の機能はナレッジと過去のケースに基づいて返信案を生成します。
Service Replies for Chatのイメージ
チャットでは、「投稿」「編集」のボタンが用意されており、そのまま投稿するか、返信案を編集して回答を強化させるか選ぶことが出来ます。ナレッジを基に生成された返信案には、どのナレッジを基としたのかをそのまま画面上で確認することも出来ます。
Service Replies for Emailのイメージ
キャプチャは、推奨されるナレッジが表示され、そのナレッジを基にメール文面を生成してくれている場面です。Spring ‘24時点で日本語は未対応であり英語になってしまいますが、日本語対応が完了したらケース解決までの時間を大幅に短くしてくれる機能です。
2024年3月14日より、本機能も日本語対応されました。これで日本でもケース解決までの時間を大幅に短縮できるようになりますね。
Einstein Reply Recommendations
一言で言うと、「過去のチャット内容に基づいて、顧客からの問い合わせ(質問)に適した返信や回答を提案してくれる」機能です。(日本語対応済み)
先ほどのService Replies for Chatと似たような機能となりますが、異なる点は返信案のソースが「過去のチャットから最適化されたデータモデル」というところです。多くの顧客の問題を解決してきた会話内容が学習データとなり、その中でサポート担当者の発言を一般的な返信内容として特徴別に集約(クラスター化)します。この集約された返信内容からテンプレートが作成され、管理者は最も適しているものを選択/編集することでデータモデルが作られます。サポート担当者は顧客とのチャットで、このデータモデルから作成された返信案を受け取り、顧客へと回答することが出来ます。
多くのサポート担当者が重ねてきた努力に、AIがさらなる価値を付けて、次の顧客体験へと結びつけます。
利用にあたっては、多くの準備(例:4ターン以上の会話が1,000件以上蓄積されているなど)が必要ですので、公式ドキュメントを読むことをオススメします。
Einstein Work Summaries
一言で言うと、「顧客と会話した内容を要約してくれる」機能です。(日本語対応済み)
顧客と会話した内容がどのようなものであったのか、なぜ顧客は問い合わせてきたのかを把握することは、カスタマーサービスにおいて非常に重要です。しかし、やっとの思いで顧客の質問を解決出来た安堵の気持ちの後に、改めて内容を振り返ることはサポート担当者の疲労を蓄積させる一因です。
Work Summariesは、それらを解決してくれる機能です。サポート担当者と顧客の会話内容から、AIが「どのような会話であったのか(概要)」「なぜ顧客は連絡してきたのか(問題)」「どのような結果になったのか(解決)」の3つの情報を整理/生成してくれます。そして生成された結果は、ケースや取引先責任者などの顧客に関連するレコードに保存することが出来ます。
Work Summariesのイメージ
Midconversation Summaries
一言で言うと、「会話に途中参加した担当者向けに内容を要約してくれる」機能です。(Spring ‘24時点で日本語未対応)
Work Summariesと機能は似ていますが、Work Summariesが「完了した会話に対しての要約」であるのに対して、Midconversation Summariesは「完了していない途中会話の要約」です。
時にはサポート担当者では解決出来ずに、スーパーバイザーの力を借りる時もあります。しかし、いざ任せようとした時にスーパーバイザーは内容を知らないため、まずは把握することから始まってしまいます。これでは、顧客は不満を募らせてしまいます。
そのような時、Midconversation Summariesであれば、会話途中であっても内容を要約し、スーパーバイザーに状況を教えてくれます。要約するためにサポート担当者が情報整理する必要もありません。スーパーバイザーが監視を開始したり、メッセージに参加するだけで、生成AIが会話内容は要約してくれます。
リンク集
以下にSalesforceの公式が出しているサイトを掲載していますので、そちらもぜひ読んでみてください!
- Salesforce、世界初のCRM向け生成AI「Einstein GPT」を発表
- YouTube(Service GPT ナレッジ化も提案も生成AIで。|Salesforce)
- Salesforce ヘルプ(Service Replies)
- Salesforce ヘルプ(Service Replies for Chat)
- Salesforce ヘルプ(Service Replies for Email)
- Salesforce ヘルプ(Reply Recommendations)
- Salesforce ヘルプ(Work Summaries)
- Salesforce ヘルプ(Midconversation Summaries)
最後に
以上が世界初のCRM向け生成AI「Einstein GPT」と、カスタマーサービスに特化した「Einstein GPT for Service」のご紹介でした。これからの時代、AI導入は当たり前となり、求められることは「どんなAIをどのように活用していくか」だと思います。
そしてセールス/サービス/マーケティングは、ビジネスにおいて欠かすことのできない存在です。高品質で高機能なCRMソリューション「Salesforce」とそれらに特化した「Einstein GPT」を掛け合わせることで、企業の成長は飛躍的に加速します。
弊社ではSalesforceの導入・活用支援はもちろんのこと、今回ご紹介した「Einstein GPT for Service」の導入支援も提供していますので、気になる方は是非お問い合わせください!
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