パートナービジネスを加速するEinstein
(Einstein, the Partner Business Accelerator)
堀江です。Dreamforceの3日目も数々のセッション参加やネットワーキングなど濃密な1日を過ごしました。
最初に参加したセッション「パートナービジネスを加速するEinsteinGPT」ではSalesforceの生成AIの強みについて語られました。
現在はビジネスにおいても日常の会話においても必ずAIが登場する時代になっています。我々もビジネスの中で特に生成AIの強みを活かす必要が出てきていると感じます。
ビジネスで生成AIを活用する例としては以下のようなものが考えられるでしょう。
- コンタクトセンターでのレスポンスタイムの改善
- パーソナライズされたインタラクションの活用
これらはAIを利用するビジネスの現場のみならず顧客との双方にとってのメリットがあります。
そしてパートナー企業においても顧客との会話のためにより双方の理解を深める必要があります。
多くの企業のCEOはAIの導入にあたっての優先度の高さを感じてはいるものの、信頼性が障壁になっておりまだまだ活用は進んでいないのが現状です。
CEOはAIの導入にあたってのプライオリティを感じているものの、信頼性が障壁
AIは予測AIと生成AIの2種に大別されますが、Salesforce CRMの組み込みAIであるEinsteinの最新機能として、エンドユーザーの情報を360度で一元管理するCustomer 360 Dataと監査やデータマスキング、有害性の検出などでデータの信頼を形成するEinstein Trust Layerが改めて紹介されました。
Einstein Trust Layerの特徴的なOpen ModelsのレイヤーではSalesforceが提供するモデル以外にも将来的にBring Your Own Modelとしてそれぞれのユーザーのためのモデルを持つことができるようになる見込みです。
Einstein Trust Layerの特徴
- プロンプトを作ることでより顧客と密接に繋がることが可能
- LMLに送られた情報はSecure Gatewayを通るため、有害性やハルシネーションがない
- 監査履歴は30日を保持
- 最終的には人間が確認し、対応を実施(人間が最後のAuditerになる)
現在入手可能なケイパビリティ
- Sales Emails GA※:プロンプトを選択肢から選び、Emailの文章を自動的に生成
- Service Replies
- Work Summaries
- Email Contents Creation
AI CRM: Service Einstein Demo
CRMでのAI活用としてService Einsteinのデモが紹介されました。デモのポイントは以下の通りです。
- Knowledge:Communityへの検索に対してEinsteinが自動的に一次回答を実施
- Service Replies:Botなどで質問された事項について自動的にEinsteinが回答をレコメンド
- Work Summaries:クローズ時に自動的にEinsteinが質問や対応内容やサマライズ
この他の情報としてはAI Associate認定資格の設置やAI+Data+CRMの学習ジャーニーが紹介されました。すでに2023年9月にはAI+Data+CRMを深く掘り下げる学習がリリースされています。
AI+Data+CRMの学習ジャーニー
Einstein Trust Layerの日本語化については来年の2月を目処にリリースが計画されているとのことです。
Developer Preview: Winter ’24 Release Readiness Live
本セッションでは今後リリースされるWinter ‘24およびSpring ’24におけるDeveloper Toolsの主要機能を中心に開発者向けの情報が提供されました。
Developer Toolsの主要機能
Mulesoftのロードマップ
Lightning Web Component Roadmapのロードマップ
Data Cloud Roadmapのロードマップ
Dreamforce Wrap Up Session
Dreamforceの振り返り
日本の顧客およびパートナー向けのDreamforceのまとめのセッションでは、大盛況だったDreamforceの3日間の振り返りが日本語の通訳付きで行われました。
今回のDreamforceではAIが大きく取り上げられましたが、今後AIの進化は予測型から生成型を経て最終的には汎用的なAIとなっていくと予測されます。
AIの活用においてはLLM(大規模言語モデル:大量のテキストデータを使ってトレーニングされた自然言語処理のモデル)にデータを取られてしまうのではないかという懸念がありますが、Einstein 1 Platformは信頼できるAI Platformであり、すべての情報がメタフレームワークで統合された信頼できるモデルとして提供されるとのことでした。
Einstein 1 Platformでは信頼できるモデルで提供
SalesforceはAIに対する信条として信頼・倫理・人間的なAIを掲げており、Einstein Trust Layerがこれを担保するとのことでした。
AI Revolution
AI RevolutionのパートではEinstein Data Cloudの概要について紹介され、さまざまなData LakeやData Warehouseと連携し、CRMアプリケーションやEinsteinが利用可能なデータの統合について解説がありました。
Einstein 1 DataCloud
様々なデータコネクタで収集・統合・蓄積されたデータはTableau Plusで分析も可能とのことです。
Customer Revolution
AI RevoluitonにおいてEinsteinを全く新しい次の次元で顧客と繋げるためのツールEinstein 1 Copliotが紹介されました。
マーケティング部門は担当者がEinsteinと対話しながら顧客セグメンテーションを行い、キャンペーンを展開、コンテンツ制作までを完結することが可能になります。
営業部門はData Cloudを介して集約された情報を確認しEinsteinの力を掛け合わせて得た顧客のインサイトを営業活動に利用できます。
サービス部門は窓口担当者がCopilotと共に業務を行うことで顧客の期待に沿った回答を提供し速やかにケースをクローズできます。
Copilot StudioはPrompt Builderを使って欲しいレスポンスを得られるようにチューニングされます。
Copilot Studio
また最近ユーザーインターフェイスが刷新されたSlackですが、AIが搭載され自然言語処理でレスポンスを得られるようになり、Project Trackerを挿入できるようにアップデートされました。新機能のSlack Sales Elevateは、商談情報の通知、商談の表示と更新が可能となり、Sales Canvasでドキュメントを生成可能になるとのことです。
最後にAI & Data Revolutionとして、データを統合し、信頼できるAIでCRMの利活用を進める提案が行われ、Gucciにおける事例が紹介されました。
注目セッションサマリ
この他の注目セッションにおけるトピックとしては、SalesforceのAIと他のLLMモデルとの比較や、AIと倫理の共存、AIの活用先などがありました。
中でもAIの活用としてはファンドレイジング、インドネシアにおけるヘルスケアのカバレッジをTableauで可視化、温室効果ガスの可視化などが紹介されました。
まとめとしてAIに関する主要論点が整理され、今後のAI活用について考慮すべきポイントが明確になったと感じました。
プロダクト最新情報
最後に今後のSalesforceのプロダクトの最新情報について整理します。
年3回リリースで提供されるプロダクトはステータス(パイロット:限定公開・ベータ・GA)、言語、地域の3種類の観点で管理され私たちに提供されています。以下は主要プロダクトごとの最新情報です。
Sales Cloud
Einstein会話インサイト
- お客様の印象に対してポジティブ/ネガティブを判定
- 会話内容の要約
- 次に何をすべきか
- 顧客の購買確度はどうか
Service Cloud
Search Answer
- 複数のナレッジを元に適切な回答を自動生成
Service Replies
- あらゆるチャネルやタッチポイントでパーソナライズされた回答を自動生成
Work Summaries
- 対応データを元にケースの要約を自動生成
Knowledge Articles
- 対応内容を元にナレッジをレコメンド
Revenue IntelligenceのService版が登場
Marketing Cloud
Segment Intelligence for Data Cloud
- キャンペーンパフォーマンス分析データの自動連携とダッシュボードによるインサイト獲得
Segment Creation
- 自動セグメンテーション作成
Email Content Creation
- メール件名や本文の生成
Typeface Partnership
- Typefaceとの協業による画像生成の実現
Journey Re-Mapping
- 顧客の行動有無に基づき、最も関連性の高いジャーニーを自動稼働
Real-Time Customer Event Stream
- 顧客のイベントを表示しエージェントがリアルタイムに対応可能
Commerce Cloud
Einstein Copilot for Merchants
- 生成AIで商品情報やプロモーションを自動に作成してサイトを最適化
Return Insights for Order Management
- 顧客の返品理由・商品情報、レビューを分析して返品率を改善してコンバージョン率を向上
Analytics Cloud
Tableau Pulse
- パーソナライズされた対話型分析
Einstein Copilot for Tableau
- 自然言語で指示をして分析を深めていく
Intelligent Apps
- Customer 360のためのネイティブインサイトを構築
MuleSoft
Einstein for Anypoint Code Builder
- VSCで開発が可能になりEinsteinのコード生成機能が付与される
Einstein for Flow
- CoreのFlowやApex Test、FormulasをEinsteinが自然言語で生成
Mulesoft Steps
- Flow OrchestrationからMulesoft Anypoint上のAPIやRPA Botを呼び出し可能
Salesforce Platform
Prompt Builder
- Customer 36O のデータを用いてレコードとフィールドを生成するプロンプトテンプレートを設計
Einstein for Developers
- Einsteinがコードを生成、自動補完、AIベースのコードアシスタント
Slack
Slack Elevate
- SlackとSalesforceの連携で差別化されたCRM体験を提供
Slack AI
- シームレスに組み込まれた生成AI
Slack Automation
- 新しいワークフロー・ビルダーによる自動化
Customer Success
Customer Success Score
- Signature Success Plan契約のお客様のみ
- AIのサポートプランを提供
最後に
日本からは約1000人が駆けつけたFY23 Dreamforceでしたが、非常に大きな盛り上がりを見せました。
基本的にほとんどのSessionはAI×Somethingで展開されており、その中で我々がすべきことは以下3点にサマライズされると感じました。
- AIに対する認識をアップデートする:新しいテクノロジーに対する恐れを捨て、有効に活用することで業務効率や施策効果の最大化に繋げる意識を持つこと
- スキルアップ:AIの歴史や仕組み、設計・実装方法、業務に対して活かしていく方法論の学習
- 業務分析と定量化:現状業務を分析し、AIを活用し生産性を向上できる業務プロセスの洗い出しと想定ROIの策定
最後に、今後もアンテナを高く貼りながら我々ベンダーも導入企業様も一体となり、AIを活用することでよりビジネス発展をしていければという願いを込めて、サマリとさせていただきます。
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