営業やマーケティングにおいて成果をだすために欠かせないことの一つが、見込客の「セグメント」と「ターゲット」です。普段の業務では、「セグメントを決める」「ターゲットを絞る」と言ったり、「セグメンテーション」や「ターゲティング」という使い方をしたりするかもしれません。さらには「ターゲットセグメント」という言い方もあり、使っているうちに「セグメント」と「ターゲット」の定義が曖昧のまま会話を進めていることもあるのではないでしょうか。
そこで本記事では、あらためてセグメントとターゲットについて整理をしてみます。
セグメント(セグメンテーション)およびターゲット(ターゲティング)とは
「セグメント」とは、直訳すると「部分、区分」などの意味ですが、マーケティング用語では「購入者の年齢・性別・職業などによって行われる区分(注1)」のことで、言い換えると、特定の条件をもとに顧客をグループ分けすることをいいます。このセグメントに分ける、つまりセグメント化する行為を「セグメンテーション」といいます。
一方、「ターゲット」とは、セグメント化により作成したグループのうち、自社の狙いたい対象グループのことです。セグメントに分けたグループのうち自社のターゲットを決める行為を「ターゲティング」といいます。
このようにセグメントとターゲットは深く関係していることから、普段の会話でも無意識に同じような意味で使ってしまうかもしれません。
基本の考え方はSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)戦略
セグメントやターゲットの話をする際に、切っても切り離せないのがフィリップ・コトラー氏の「STP戦略」です(注2)。これは、前述のような「セグメンテーション」や「ターゲティング」に加えて、「ポジショニング」(競合と比較した自社商材の特性が位置するところ)まで含めたマーケティングのフレームワークです。マーケティングに関わる人なら一度は耳にしたことがあるでしょう。セグメントとターゲットが曖昧になったときに、この「STP」という言葉を思い出すと、「S=セグメントをわける」→「T=ターゲットを決める」と整理しやすいかもしれません。
実は奥深いセグメントとターゲット
STP戦略についてはネットや書籍に多数の情報が掲載されており、考え方自体は難しくありません。しかし、いざ実行しようとすると、その難しさや奥深さに気づくことになります。というのも、商材にもよりますが、セグメントの『軸』を決めること自体がカギであり、競合と比較した自社や商材の特性(ポジショニング)と深く関係しているからです。
例えば、あるコーヒー店を例に考えてみましょう。
お店の強みは、「淹れたてのコーヒーを低価格で早く提供する」であり、この場合のターゲットを「忙しい会社員、なかでも外回りが多い営業職、20~30代」を対象としていたとします。
職業や年齢などの属性は最も一般的なセグメントの例であり、コーヒー店のターゲットとしても問題なさそうです。しかし、見方を変えて「外食費を抑えたい」というニーズのある人をターゲットと考えるとどうでしょうか。セグメント軸は「年収」や「1か月のお小遣い」かもしれません。その場合、ターゲットは主婦や大学生なども考えられます。会社員という枠だけで考えていると思いつかないターゲット像です。
このようにセグメントの軸を選ぶこと自体が、可能性を制限したり新たなチャンスを生み出したりすることにつながります。上記は説明をシンプルにするための例ですが、セグメンテーションやターゲティングが難しい理由です。
さきほど、「セグメントをわける」→「ターゲットを決める」と記述しましたが、逆に自社の強みや競合との違い(ポジショニング)を整理し、自社のサービスを必要とするターゲットを考えるというように、逆からセグメントやターゲットを考えることもあるでしょう。また、実際の運用では、仮説と検証を繰り返しS⇔T⇔Pを行ったり来たりすることで精度をあげていくこともあると思います。あるいは、新たな自社の強みや競合の出現とともに、STPを検討しなおす必要もでてきます。先のコーヒー店の例でいえば「おいしいコーヒーを安く早く飲める」ことが強みですが、淹れたてのコーヒーを扱うコンビニエンスストアが近くにできれば、新たなポジショニングやターゲットの検討が必要になり、新たな戦略を練ることが求められます。
適切なセグメントおよびターゲットのチェックポイント
なかなか奥が深い「セグメンテーション」と「ターゲティング」ですが、適切な選び方としての指針があるのをご存知でしょうか。4Rや6Rとよばれる以下の項目です(注3)。
① Realistic(Realistic Scale): 市場規模
有効な市場規模があるかどうか。どんなに確度の高い条件でも、ターゲットとなる見込客が十分にいなければ利益があげられません。
② Rate(Rate of Growth):成長性
将来ビジネスチャンスが広がる可能性のある市場かどうか。現時点で市場規模が小さくても、将来的に広がる可能性があれば、検討の候補となります。
③ Rank:顧客の優先順位
優先度の高いセグメントかどうか。優先順位をランク付けできているか。
④ Reach:到達可能性
選んだセグメントに対してサービスを届けられるかどうか。ターゲットを抽出するために必要な情報が不足していたり、アプローチする手段がなかったりする場合は施策を行うことができません。
⑤ Rival:競合状況
すでに競合が占めている市場でないか。魅力的なセグメントであっても、すでに競合が占有している場合は、差別化が可能な別のセグメントを見つけた方が良いかもしれません。
⑥ Response:反応の測定可能性
結果を測定できるかどうか。結果を検証できなければ、選定したターゲットが適切だったのか判断ができません。
上記のうち、①③④⑥ひとかたまりにして「4R」、残り2つを加えたものが6Rと呼ばれます。すべてのチェック項目に該当しなくても、ある程度有効なセグメントはあると思います。また実際の業務では、上記を満たしたうえでより細かいセグメントやターゲットの検討が必要になる場合も多いでしょう。最初の検討は時間もかかり手間はかかりますが、自社商材のセグメントとターゲットを正しく定義することによって、広告やメルマガ、SEOなどのマーケティング施策において反応率が大幅に上昇することもありますので、現時点で定義をしていない企業様はこの機会にぜひ見直しをすることをおすすめします。
いかがでしたでしょうか。先に述べたように、セグメントは自社の商材や競合などにより軸の選択自体が難しくもありますが、セグメント軸(変数)については、「受注につながる重要要素!マーケティングオートメーション(MA)で使えるリードセグメント」にて詳しく説明しておりますので、ご興味のある方はこちらもあわせてお読みください。
(注1)三省堂 大辞林 https://www.weblio.jp/content/セグメント
(注2)コトバンク https://kotobank.jp/word/STP%E6%88%A6%E7%95%A5-1465867
(注3)グロービス https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11606.html, https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11615.html
~狙ったターゲットへタイムリーにアプローチ~
マーケティングオートメーションを始めてみませんか?
マーケティングオートメーションでは属性や行動にもとづいたセグメント分けやターゲティング施策も効率よく実現可能です。