Dreamforce 2025 現地レポートDay1

Kaishi Horie

Rewa Tech

イベントレポート

世界最大級のテクノロジーの祭典とも言えるSalesforceの年次イベント「Dreamforce 2025」がサンフランシスコで開幕しました!

今年も取締役の堀江が10月14日から始まった同イベントの最新レポートを現地よりお届けします。

AIが駆動する「Agentic Enterprise」の夜明け

今年のDreamforceは、恒例のHawaiian Showで華やかに幕を開け、会場は熱気に包まれました。

今回のDreamforceにおける最大のテーマは、CRMとAIが融合した次世代のビジネスモデル「Agentic Enterprise(エージェンティック・エンタープライズ)」への変革です。

プロローグではAgentforceを活用している企業によるPitchが行われました。

これらの企業がAgentforceを採択した理由と現在感じている導入のメリットとして以下が上げられました。

  • 瞬時にDeployが可能
  • 高いスケーラビリティ
  • 作業効率の改善
  • 適切な情報を適切なタイミングで提供可能
  • すぐにSmall Winにたどり着ける

最後には、最もコミュニティに対して貢献したTrailblazerに対するGolden Hoodieの授与が行われました。現在では世界で 12.500人のTrailblazerが存在するとのことです。

メインキーノート:人類とAIエージェントの共創

Marc Benioff CEOによるメインキーノートは、このAgentic Enterpriseを築くためのビジョンで貫かれました。

メインメッセージ:「Agentic Enterprise」

Benioff氏は、「Humans & Agents drive customer success together(人間とAIエージェントが協力して顧客の成功を推進する)」と力強く宣言しました。これは、テクノロジーが人間の仕事を奪うのではなく、「従業員を持ち上げる」ツールとして機能し、生産性を劇的に向上させるというメッセージです。

Salesforceは、テクノロジーの進化を「Cloud → Mobile → Social → Generative AI → Agentic AI」と捉え、現在は自律的に思考・行動するAgentic AIの時代に突入したとしています。

Salesforceは「Customer Zero」

またBenioff氏は、SalesforceがAgentforceの最大のユーザーである「Customer Zero(ドッグフーディング)」であることを強調しました。

オムニチャネル(Web、Mobile、Slack、App)対応のAgentforceを導入した結果、同社のSalesforce Helpにおいては、インシデントの77%をAIエージェントが解決し、残りをServiceチームが対応する体制を実現したとのことです。これは、AIによる効率化が現実的であることを示す事例と言えるでしょう。

Agentforce 360:全方位で進化するAI

Salesforceは、自社のソリューション全体を再定義し、「Agentforce 360」として展開することを発表しました。これは、単一のAI機能ではなく、Salesforceの全ての領域でAIエージェントが働くエコシステムです。

分野ごとのAIの役割

分野 概要
Agent Mulesoft Agentなど、各プロダクトに組み込まれたエージェント
Customers Service/Sales Cloudなど、顧客接点を効率化
Employees SlackやTeamsを活用し、従業員の生産性を向上
Operations Agentforce IT ServiceやField Serviceなど、社内オペレーションの自動化
Industries Financial Service、Public Sectorなど、業界特化型のソリューション

開発者注目の新機能:Agentforce Vibes(バイブコーディング・ツール)

今回のキーノートにおいて、開発者にとっては、「Agentforce Vibes」が最大のハイライトかもしれません。これは、Contextを理解したDev Toolであり、ChatGPT-5ベースで駆動します。Agentforce Vibesの概要は以下の通りです。

  • Promptを投げるだけで、AIがメタデータを書き、アプリを構築。
  • 処理だけでなく、UI/UXについても自然言語で指示が可能
  • プレビュー後、そのままDeploy(Flowや各AssetにBuilt)が可能

まさに「機械が考えてくれる」未来のDevOpsを示してくれるツールと言えるでしょう。

企業の活用事例:Agentforceがもたらす革新

キーノートでは、Agentforceの導入企業による具体的なPitchが行われました。共通して挙げられたメリットは、「瞬時にDeployができる」「スケーラビリティ」「効率が良い」「適切な情報を適切なタイミングで届けられる」「すぐにSmall Winにたどり着ける」といった即効性の高さです。

Pitch登壇企業の活用事例

企業名 活用事例と効果
Williams-Sonoma WebサイトでAgentforceを起動し、顧客の購入履歴に応じたレシピを検索。Agentforce Builderで自然言語から構築し、Webサイトをダイナミックに遷移させる体験を提供。ビジネス全体の70%がオンライン経由となる同社で、顧客体験を革新。
PANDORA Agentforce Commerceを導入。顧客の好みや目的を聞き出し、カタログから最適な商品を提案。ワンストップで購入まで可能にし、カスタマーサービスはVoicebotで対応。
FedEx 対社内でAgentforceを利用。PDF等のドキュメントを読み込ませ、組織ポリシーを加味した上で返答を生成。機密情報に対するマスク対応も可能にし、ナレッジ検索の効率化とコンプライアンスを両立。
DELL 手書きのメモなどをアップロードし、サプライチェーンの約90%を自動化。複雑な業務プロセスをAgentforceによって簡素化。
PepsiCo 組織内のあらゆるチームを支援するプラットフォームとして位置づけセールス、マーケティング、フィールドサービスなど複数の部門で活用。

Agentforceを使うにあたって重要なことは、会社内の業務プロセスを理解することであり、「機械が考えてくれる」という変化を理解した上でビジネスを刷新していくことが求められるということでしょう。

Slackキーノート:Agentic OSとしてのSlackの役割

メインキーノートに続き、Slack CEOのDenise Dresser氏によるキーノートでは、「Agentic Enterpriseにおける仕事の再構築(Reimagining Work)」がテーマとなりました。

Slackのビジョン:Agentic OS

Slackは、単なるメッセージングツールではなく、「Agentic OS(オペレーティングシステム)」として、CRMのフロントエンドを担う中核プラットフォームとなることが強調されました。

部門ごとのエンパワーメント

部門 活用例
人事部門 労務に関する質問の大半に対してSlack Agentが回答。
営業部門 Slack上でパイプラインのアップデートやネクストアクションを瞬時にレコメンド。
エンジニア 開発に関する質問や情報収集をSlack Agentがサポート。

Slackの重要アップデート

前述のような部門ごとの業務効率化と生産性向上を実現するためにSlackの多くの新機能が発表されました。

Slackはただのツールではなく仕事のやり方自体を変えるものであり、Salesforceのための会話型のインタフェースとして捉えるべきものであるとのことです。すでにEmployee Facing TemplatesとChannel Expertの新機能についてはGAが完了しています。

デモではGEMのようなイメージでAgentを複数作成したり、ToDo管理やCRMに格納されているようなケースの情報をSlack上で行える機能が紹介されました。

この他にも多くの機能がリリースされます

  • Employee Facing Templates & Channel Expert: GA(一般提供)が開始。部門固有のテンプレートや、特定のチャンネルのエキスパート(Agent)をすぐに利用可能。
  • Your Agent: ユーザーが独自のAgentを複数作成・管理可能(例:GEMのようなイメージ)。ToDo管理や、Core(Salesforceの基幹データ)へのアクセスなしにケースのクローズ等の操作を簡潔に実行。
  • AI Huddle、AI translations、Canvas、AI channel recaps: コラボレーションと知識共有を加速させるAI機能群がリリース。
  • Realtime Search API: 2026年6月のGAに向けて準備中。Notion、Perplexity、Gemini、Dropboxなど、他の3rd PartyのAgentをSlack上で駆動させることが可能になり、「Unify your entire enterprise into one Agentic OS」を実現します。

まとめ

Dreamforce初日の発表は、Salesforceが単なるCRMベンダーから、「Agentic Enterprise」を牽引するAIプラットフォームへと決定的にシフトしたことを示したと言えるのではないでしょうか。

Benioff氏が述べたように、今後の重要な変化は「機械が考えてくれる」ということです。導入パートナーとして、私たちはこの変化を深く理解し、お客様のビジネスプロセスをAI時代に合わせて刷新していくことが求められると感じたDreamforceの初日でした。

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