初対面のビジネスシーンにおいて、名刺は欠かせないアイテムです。名前の読み方や名刺のデザインがアイスブレイクとなって、商談が弾むことはよくあるものです。コロナ禍の影響で、対面で名刺を交換することは少なくなったとはいえ、リレーションの強化やビジネスチャンスの拡大につながる重要な営業資源として活用する人も多いでしょう。
近年では、従来のアナログな名刺管理に代わり、名刺を含めたすべての顧客情報を全社的に一元管理する「CRM」や、名刺データをシステム上で一元管理する「名刺管理ツール」を導入する企業も増えてきました。ここでは、CRMと名刺管理ツールの違いについて、わかりやすく解説します。
CRMの機能
CRMは「Customer Relationship Management」の略で、顧客とより友好な関係性を構築するために、関連するあらゆる情報を会社全体の営業資源として一元管理するシステムのことです。
具体的には、次のような機能を有しています。
顧客情報の管理・分析
CRMはいつ、何を、どんな目的で、誰から購入したかという顧客の購買行動を管理し、必要に応じて顧客目線で分析します。それによって、求められる営業の在り方や商談のタイミングを逃さず、顧客に与えるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化します。
営業活動管理、支援
CRMには、顧客に紐づく情報として、これまでの取引の内容やニーズ、接点の履歴などが一元管理されているため、スムーズなリレーションの構築に役立ちます。また、異動や転職などで営業担当が代わっても、スムーズに顧客との関係を継続することができるでしょう。
マーケティング支援
CRMに蓄積された顧客情報を分析することによって、顧客一人ひとりのニーズや行動に合わせたパーソナライズドマーケティングを行うことができます。顧客の興味関心の度合いをスコアリングしたり、それに合わせてフォローアップメールを送ったりといったマーケティング活動が可能です。
カスタマーサービス最適化
CRMに、問い合わせやクレームの内容と対応履歴を顧客情報に紐づけて保存し、その後の対応に活かすことで、カスタマーサービスを最適化します。
よくある問い合わせやクレームの内容、タイミングを分析することで、商品やサービスの改善につなげることもできるでしょう。
名刺管理ツールの機能
名刺管理ツールは、紙ベースの名刺をスキャンして、記載されている情報をデータとして管理するものです。具体的な機能について見ていきましょう。
名刺をスキャンしてデータ化
名刺管理ツールは、スキャナーを使用し、OCR機能で名刺に書かれた文字を読み取って、情報をデジタルデータとして保存します。手入力と違って手間がかからず、OCRと併せてオペレーターのチェックを利用することで、精度の高い顧客リストが作成できるでしょう。
検索機能
従来の、紙ベースの名刺管理を名刺管理ツールに変更する目的のひとつに、検索性の向上が挙げられます。名刺管理ツールを利用することで、五十音順はもちろん、企業名や業種名などで絞り込むことができ、一瞬で求める顧客情報を引き出すことができます。
名寄せ
自社の組織変更などで、同じ客先へ別の担当者が訪問した場合、同一人物の情報が社内に存在することになります。また、顧客の担当者が昇進したり、異動したりすることで、肩書の違う同一人物の情報が蓄積されることもあるでしょう。
こうしたとき、名刺管理ツールであれば、同一人物と推定される情報を検出し、不要な情報を削除する「名寄せ」が簡単に行えます。
マルチデバイス対応
ほとんどの名刺管理ツールは、スマートフォン、パソコン、タブレットなど、マルチデバイスに対応しています。交換した名刺をスマートフォンで撮影して名刺管理ツールに取り込み、パソコンで整理するといった使い方ができ、社内外どこからでも閲覧することが可能です。
CRMと名刺管理ツールの違い
CRMと名刺管理ツールは、顧客の情報を管理する点では同じですが、その目的やデータの内容には大きな違いがあります。
目的の違い
CRMと名刺管理ツール、それぞれの目的を整理してみましょう。
CRMは、名刺に記載されている会社名、担当者名、住所、電話番号といった基本データに、関連するさまざまな情報を組み合わせて保存することで、SFA(営業支援システム)に近い役割を果たします。その目的は、顧客満足度の向上と売上アップです。
顧客から問い合わせや依頼があった際には、蓄積された情報をスピーディーに呼び出すことで的確に対応し、長期的に良好な関係を維持したり、売上につなげたりします。営業現場では、営業の目標に対する進捗を管理する目的でも利用され、適切なタイミングでテコ入れをすることによって売上アップを実現します。
名刺管理ツールの目的は、その名のとおり、名刺を管理しやすくすることが目的です。社員それぞれが個別に交換した名刺をデジタル化することによって、必要な情報を迅速に呼び出せるだけでなく、全社で共有して有効活用することができます。
データ内容の違い
CRMが蓄積するのは、以下に挙げるような顧客に関するあらゆる情報です。
<CRMに蓄積される情報>
- 基本的な担当者の属性情報(会社名、肩書、住所、電話番号など)
- 商談履歴および商談の状況
- 販売履歴
- 売上見込み
- 収益性
- 顧客の趣味嗜好
- 問い合わせ内容
一方、名刺管理ツールで保存されるのは、基本的に名刺に記載されている情報です。
<名刺管理ツールに蓄積される情報>
- 基本的な担当者の属性情報(会社名、肩書、住所、電話番号など)
担当者の引き継ぎの挨拶をスムーズに行って関係を強化したり、見込み顧客、潜在顧客、休眠顧客を掘り起こしてアプローチしたりするのに使われます。
CRMのメリット・デメリット
CRMのメリットは、なんといっても顧客にまつわるさまざまな情報を集約し、一元管理できることです。全社的に情報が共有されるので、さまざまなシーンでデータの活用が可能になります。
CRMの活用例を挙げてみましょう。
<CRMが活用できるシーン>
- 営業現場における個々の営業担当者の進捗管理
- カスタマーサポートまたはコールセンターでの問い合わせやアフターフォローの質の向上
- 商品の購入、サービスの導入検討段階に合わせたアプローチ
- 自社製品やサービスの改良、改善
- 業務効率化
一方で、CRMにはデメリットもあります。
CRMは比較的大規模なシステムであり、導入の方法によってはコストと手間がかかることがあります。ただし、最近では比較的安価で簡単に導入できるクラウド型のCRMが登場し、多くの企業に選ばれています。
また、効果がすぐには見えないこともデメリットです。CRMは多岐にわたる情報が多く集まってこそ真価を発揮するため、しばらくは地道に情報を蓄積していく必要があります。
さらに、データ活用が難しい場合があることも挙げられます。入力が面倒で、そもそも使われなかったり、顧客数が少なかったりすると、せっかくのCRMも真価を発揮できません。現場の負担を抑え、定着を図るスキームが不可欠です。
名刺管理ツールのメリット・デメリット
では、名刺管理ツールには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
名刺管理ツールの最大のメリットは、これまで個人の管理下にあった顧客の情報を、簡単に社内で共有できることでしょう。名刺をスキャンするだけで保存でき、簡単に欲しい情報を呼び出せるので、紙の名刺に比べて管理も効率的です。出先で顧客の情報を確認したいときも、マルチデバイスに対応していればスマートフォンやノートパソコンからすぐに閲覧できます。
ただし、名刺管理ツールは名刺の管理に特化しているため、CRMやSFAと連携できるものを除いて、顧客にまつわる詳細な情報を紐づけることができません。名刺交換以外で顧客に接触した場合、その情報が蓄積されないという点もデメリットのひとつです。
CRMと名刺管理ツールで迷ったら、目的を見極めて導入を
顧客の情報管理のためのシステムとして代表的な、CRMと名刺管理ツール。どちらを導入すべきかで悩んだら、名刺の管理にかかる負担を軽減したいのか、顧客情報を総合的に管理して多様なシーンでの活用を目指すのか、目的に応じて判断しましょう。
CRMに名刺管理の機能が組み込まれているものや、CRMと連携できる名刺管理ツールもありますので、併せて検討してみることをおすすめします。
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