HOME > ソリューション > マーケティングオートメーション > 顧客接点チャネルの多様化と個人データの統合
第2回では、マーケティングオートメーションが注目される背景の1つ目として、「顧客の購買行動の変化」について説明をしました。
今回は、2つ目の背景である「顧客接点チャネルの多様化と個人データの統合」について説明をします。
インターネットは購買前の情報収集に利用されるだけでなく、顧客と企業との双方向コミュニケーションや、ECのように実際に取引をする場など、顧客接点チャネルとしての利用が拡大しています。さらに近年では、「オムニチャネル」という概念が提唱されています。「オムニ」とは、ラテン語を語源とする「全て」を意味する造語です。そして、オムニチャネルとは「全てのチャネルを相互に関連を持ちながら有機的に融合させ、複数チャネル間を横断して接触する顧客を1人の顧客として捉える」ことを指します。
これまで、顧客接点チャネルについては、シングルチャネル、マルチチャネル、クロスチャネルといった概念が提示されて来ましたが、これらとオムニチャネルは何が異なるのでしょうか?オムニチャネルに至るチャネルの変遷を確認してみましょう(図1)。
チャネル | シングルチャネル | マルチチャネル | クロスチャネル | オムニチャネル |
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年代 | ~1999年 | ~2005年 | ~2010年 | 2011年~ |
企業と顧客の接点変化 | ||||
特徴 | 単一接点 | 個別に複数接点 | 複数接点がクロス 顧客管理は個別 |
すべての接点を融合 顧客管理も融合 |
オムニチャネル化が進展した理由としては技術的な背景があります。それは、これまでは実現が難しかったインターネット上での個人特定、行動履歴の取得と蓄積が技術的に可能になった事です。企業は、コーポレートWEBサイト、ブランドWEBサイト、ソーシャル・メディアアカウントなど、自社のインターネット・チャネルを利用して顧客に対して情報発信を行ってきました。そこでは、顧客の氏名、属性などの個人情報を取得することまではできましたが、会員制サイトなど一部のWEBサイトを除くと、その顧客がどのチャネルを訪問したか、どのページを閲覧したか、どのボタンをクリックしたか、どの資料をダウンロードしたかなど、それら個人の行動を把握することは大変困難でした。さらに、それら行動から発生するデータは「行動ログデータ」と言われ、膨大なデータ量になり、その管理には大容量のストレージが必要でした。
しかし、この数年でWEB技術は急速な発達を遂げ、自社のインターネット・チャネルに訪れた個人を特定し、その行動履歴も併せて取得し、それを保管・再利用することが可能となりました。この実現には「ビッグデータ」の存在があります(図2)。
従来、大量の行動ログデータを蓄積するには高性能・大容量のストレージや、高度なデータ負荷分散技術が必要でした。また、個別に取得したログデータを関連付けて分析するなどのデータの再利用には、高速にデータを処理する演算技術や高度な統計解析ソフトウェアなどが必要で、実現には莫大な投資を伴いました。そのため、大量のログデータを活かしたマーケティングを実施できるのは、資金力のある一部の大企業が中心でした。 しかし近年、IaaS(Infrastructure as a Service)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Plat form as a Service)など、必要なときに必要なだけサーバやソフトウェアを利用するクラウドサービスが急速に発達しました。このおかげで、自社でシステムを構築したり、高額なソフトウェアを購入せずとも、大量データの蓄積・再利用が従来と比較してより手軽に、安価に実現できるようになったのです(厂崎 2015)。
次回は「(3)労働生産性向上ニーズの拡大」について説明をします。