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前回は、「マーケティングオートメーションが注目される背景」の概要について説明をしました。今回は、その背景の一つである「顧客の購買行動の変化」について説明をします。
今や購買前の情報収集にインターネットを利用することが「当たり前」と感じている方が殆どでしょう。では、実際どの程度それが行われているのかBtoCとBtoBの両視点で見ていきたいと思います。
顧客は購買を検討している商品・サービスについて、企業が発信する情報だけでなく、メディアなど第三者が発信する情報、そして、ソーシャルメディア上の消費者のクチコミ情報など、多様な発信元から自由に情報を取得することができます(清水 2004; 濱岡・里村 2009)。ここで具体的な数字を見てみましょう。経済広報センターが2013年に実施した調査では、商品やサービス内容の情報収集に「インターネット上の情報を利用する」と回答した割合が58%と、調査対象情報源の中でインターネットが最も多く利用されていました。一方で、新聞(27%)、テレビ(26%)など従来のマス媒体情報の利用度合いは相対的に低くなっています(図1)。また、世代別においても、インターネット上の情報は全ての世代で5割を超えている状態です。つまり、どの世代においても商品やサービスを購入する際には、インターネット上の情報を利用する傾向があると言えるでしょう。
つぎにBtoBの場合を見てみましょう。近年、BtoBビジネスでの購買行動と、情報探索行動に大きな変化が現れています。表1はBtoBとBtoC取引の違いを整理したものです。
BtoB取引 | BtoC取引 | |
---|---|---|
主な顧客 | 企業/団体/学校/組織・法人 | 最終消費者/個人 |
提供される財 | ビジネス財(生産財・産業財) | 消費財 |
購買動機 | 再生産/合理性 | 消費/感性 |
購買関与者 | 多層 | 単独 |
顧客数 | 限定 | 大多数 |
購買場所 | 顧客/インターネット窓口 | 実店舗/インターネット店舗 |
供給者との関係 | 固定/相互取引 | 薄い |
BtoBで取引される商材は、生産活動やサービス提供に関わる活動を行うために必要な「ビジネス財」です。そのため、BtoBの購買意思決定では合理的で論理的な意思決定がなされるのが一般的です。また、BtoBの購買プロセスでは購買担当者以外に、実際の利用者(購買担当者が利用者の場合もある)、決済担当者など、購買関与者が多層に渡る組織的な意思決定が一般的です。このような点は、購買意思決定が単独で行われる事が多いBtoCとの違いで、BtoCのように趣味や好みなど、購買する本人の個人的な要因が意思決定に影響する事はBtoBでは少ないとされて来ました。
しかし近年、BtoBにおいても購買意思決定を現場レベルに委ねる機会が増えて来ています。余田(2006)が実施した調査結果によれば、経営の迅速化が求められる現場では購買の小規模分散化が進行し、意思決定を現場に権限移譲する傾向が見られるようになって来ているのです。その結果、これまで合理性が重視されてきたBtoBでも、BtoCのように購買担当者の個人的な要因が意思決定に影響を与えるようになって来ているのです。
さらに、BtoBの購買意思決定の際にもBtoCのようにインターネット上の情報活用が拡大しています。日本ブランド研究所が2014年に実施した調査では、企業担当者が購買活動の中で利用する情報源として、「企業のWEBサイトを利用する」と回答した割合が54.4%と、調査対象情報源の中で企業WEBサイトが一番多く利用されていました(図2)。
また、北見(2011)では、BtoBにおける購買意思決定構造の変化と、そこでのインターネット活用の状況を確認するため、購買担当者が購買プロセスのどの段階で候補業者のWEBサイトを活用するか調査を行いました。その結果、候補業者企業のWEBサイト上の情報が意思決定段階で活用されている傾向にある、つまり業者選定に大きな影響を与えている事が示されました(図3)。
このように、今や一般消費者の購買行動だけでなく、企業活動における購買行動においても、インターネット上の情報利用が拡大しています。つまり、WEBサイトは自社のビジネスチャンスを創出する場であることを、より意識することが重要になって来たと言えるでしょう。
次回は「(2)顧客接点チャネルの多様化と個人データの統合」について説明をします。