Salesforce AI活用の要!「プロンプトビルダー」とは?基本機能と業務効率化の可能性

Keiji Nishimura

Rewa Tech

技術コラム

システム開発

Salesforceの最新情報を追っていると、生成AIやプロンプトという言葉を頻繁に目にするようになりました。

これらは業務を効率化する強力なキーワードですが、Salesforce初心者やこれまでAIに触れてこなかった管理者の方からはよくこんな声を耳にします。

  • 「なんだか難しそうでとっつきにくい」
  • 「自分たちにはまだ早いのではないか?」
  • 「専門知識がないと使いこなせないのでは?」

このように、少しハードルの高い存在に感じてしまうかもしれません。

しかし今回ご紹介する「プロンプトビルダー」は、そんな方にこそ使っていただきたい直感的な業務改善ツールです。

本記事ではプログラミングなどの専門知識がない方でも理解できるように、プロンプトビルダーの基本から現場で役立つ具体的な活用シーンまでを丁寧に解説します。

本記事を読み終える頃には「AIは難しい」という不安は消え、Salesforce内のデータを活かして「明日からどの業務を効率化できるか」という具体的なイメージが明確になっているはずです。

なぜ今、Salesforceでの「AI活用」が不可欠なのか

ChatGPTをはじめとする生成AIの登場により私たちの業務スタイルは大きく変わりつつあります。 メールの文案作成やデータの要約など、これまで人間が時間をかけて行っていた作業をAIに任せることはもはや珍しいことではなくなりました。

しかし実際のビジネスの現場において、AIを業務の中心で使いこなせていると自信を持って言える企業は実はまだ多くありません。

PwCが発表した「グローバル従業員意識調査2025」によると、日本国内で「生成AIを日常的に業務で使用している」と回答した従業員はわずか6%にとどまっています。 導入自体は進んでいても、現場レベルでは「使いこなせていない」「禁止されている」というのが実情のようです。

出典元URL:https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/hopes-and-fears2025.html

なぜこれほど便利なツールが現場に浸透しないのでしょうか? そこには一般的な生成AIツールだけでは乗り越えられない、2つの大きな壁があるからです。

企業のAI活用を阻む「2つの壁」

1つ目の壁:社内データの不在

一般的なAIはインターネット上の知識は豊富ですが、会社の顧客情報や商談で話し合われた内容は一切知りません。 そのためAIに的確な指示を出すためには人間が手作業で顧客情報をコピー&ペーストして教え込む必要があり、かえって手間がかかるケースがあります。

2つ目の壁:セキュリティへの不安

顧客の個人情報や未公開の商談情報を外部の無料AIツールに入力することには情報漏洩のリスクが伴います。実際に日本国内でも、情報漏洩リスクを懸念して対話型AIの業務利用を禁止・制限する動きは少なくはありません。 過去には、利用禁止の理由として「情報漏えいリスク」がトップに挙げられたという報道もあり多くの企業が慎重な姿勢を見せています。

出典元URL:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2304/27/news058.html

このようなセキュリティへの警戒感は今も多くの企業に残っています。 IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発表した「企業における営業秘密管理に関する実態調査2024」によると、約26%の企業が2024年の時点で生成AIの業務利用を「禁止している」と回答しています。

出典元URL:https://www.ipa.go.jp/security/reports/economics/ts-kanri/tradesecret2024.html

こうした「データ不足」と「セキュリティ」を解決し、ビジネスの現場で本当に使えるAIを実現するために登場したのが今回ご紹介するSalesforceのプロンプトビルダーです。

プロンプトビルダーはSalesforceという最も信頼できる顧客データがある場所で直接AIを動かすことができるツールです。 外部のツールにデータを持ち出すことなく、Salesforce内の顧客情報や活動履歴を安全に参照しながらAIに指示を出すことが可能です。

次章ではプロンプトビルダーについて基本的な概念から具体的な活用シーン、そして導入がもたらす業務変化まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

プロンプトビルダーとは?AIへの「指示書」をノーコードで作成する

プロンプトビルダーとはSalesforceに蓄積された顧客データや商談情報を使い、AIへの指示(プロンプト)を自由に設計・管理できる機能です。

単なる「文章作成ツール」ではなく、Salesforce上のあらゆるデータをAIに渡し「要約」「翻訳」「分類」「提案」など業務に必要なあらゆるタスクをAIに実行させるための基盤と言えます。

ChatGPTのような一般的な生成AIとプロンプトビルダーの決定的な違いは「あなたの会社の事情を知った上で回答できるか」という点にあります。

例えば、特定の商談についてAIに相談する場合を考えてみてください。

  • 一般的なAIの場合 「商談のアドバイスをして」と頼んでも、AIはあなたのビジネスや顧客のことを知りません。そのため一般論としての営業ノウハウしか返ってきません。
  • プロンプトビルダーの場合 「この顧客の過去の購入履歴、直近のサポート問い合わせ内容、現在の商談フェーズを踏まえて、今日提案すべきことをアドバイスして」という取引先企業の情報を踏まえた指示が可能です。

プロンプトビルダーはSalesforce内にある膨大なデータの中から必要な情報だけをAIに「参考資料」として渡すことができます。 その結果、AIは会社の事情を汲み取った的確な回答ができるようになるのです。

このように、AIへの指示の中にSalesforceのデータを動的に埋め込む技術を専門用語でグラウンディングと呼びます。

  • 指示(プロンプト): 人間が書く命令文
  • データ(グラウンディング): Salesforceが持っている顧客情報や活動履歴
  • 生成(レスポンス): 上記2つを組み合わせてAIが導き出した回答

このグラウンディングの設定はプログラミングなどの専門知識がなくても、管理画面上のマウス操作だけで簡単に行えます。

文章作成はもちろん、長文の要約やデータのクレンジングなど、アイデア次第でAIの活用範囲を無限に広げることができるのがプロンプトビルダーの最大の強みです。

具体的に何ができる?代表的な3つの活用パターンと導入効果

プロンプトビルダーでAIへの指示を作成する際、まずは「どのような場面で使うか」に合わせて、あらかじめ用意された「型(テンプレート)」を選択することになります。

最初から全ての型を覚える必要はありません。 ここでは利用頻度が高く、初心者がまず押さえておくべき代表的な3つのテンプレートをご紹介します。 自社の業務ならどこで使えそうか、そして業務がどう効率化されるかをイメージしながら見ていきましょう。

① メールの下書き作成(セールスメール)

第2章で解説したグラウンディングの仕組みにより、単なる定型文ではなくSalesforceにある顧客情報を読み込んだ上で、顧客ごとの最適な文章を作成します。

Salesforceのメール作成画面から、あらかじめ作成しておいた「お礼メール」や「再アプローチ」などのプロンプトを選択するだけで、AIが顧客ごとの状況に合わせた文面を瞬時に生成します。 担当者はAIが作った下書きを確認し、微調整して送信するだけで「ゼロから文面を考える時間」を大幅に削減できます。

②項目の要約・入力(項目生成)

「長い文章を読むのが大変」「履歴を確認するのに時間がかかる」という課題を解決するテンプレートです。

技術的には「項目生成」と呼ばれ、AIがデータを読んで指定した場所にまとめてくれる機能です。

例えば、サポート部門で「過去の対応履歴」が数十件溜まっているとします。これを人間が全て読み返すのは大変ですが、AIなら一瞬です。

「過去の経緯を3行で要約して」という指示を作っておけばAIが自動的に要点をまとめ、Salesforceの画面上の「要約欄」に入力してくれます。 引継ぎ業務や上司への報告が驚くほどスムーズになります。

③ 自由なロジックでの提案(Flex)

メールや要約以外の「もっと自社独自のことをさせたい」という時のための万能タイプです。

Flexという名前の通り柔軟にカスタマイズが可能です。

例えば、「この顧客に次に提案すべき商品は何か?」をAIに考えさせたい場合などにも使います。 「過去の購入履歴と現在の業界トレンドを照らし合わせておすすめ商品を3つ挙げて」といった指示を出すことで、AIを営業アドバイザーのように活用できます。

SalesforceのフローやApexなどの自動化機能と組み合わせることで、画面上にポップアップで提案を表示させるなど、アイデア次第で使い方は無限大です。

導入で現場はどう変わる?

これら3つのパターンを活用することで、現場と組織には以下のような変化が生まれます。

  • 現場担当者 「白紙の状態から文章を考える」「大量の履歴を読む」といった、エネルギーを使う「0から1を生み出す作業」がなくなります。 AIが作った80点の土台を仕上げるだけで済むため、本来注力すべき顧客対応に時間を使えるようになります。
  • 管理者、経営層 ベテラン社員のノウハウをプロンプトとして実装することで、チーム全体の業務品質が標準化されます。 経験の浅いメンバーでもベテラン並みの視点でメール作成や提案が可能になり、属人化の解消に繋がります。

AI導入にまつわるよくある不安へのQ&A

最後に導入を検討する際によく挙がる「難易度」と「セキュリティ」への不安について、Q&A形式でお答えします。

Q1. プロンプト(指示文)を作るのが難しそうです。専門的なスキルが必要ですか?

A. いいえ、特別なスキルは必要ありません。

プロンプトビルダーには前述で解説したグラウンディング機能があるため、人間が細かく状況説明をしなくてもSalesforce内のデータを参照して理解してくれます。 そのためあなたは「AIに何をさせたいか」をシンプルな日本語で伝えるだけで十分です。

それでも書き方に迷ったら以下の3つの要素を意識してみてください。

  • 役割を与える: 「あなたはベテランの営業担当です」
  • データを渡す: 「この商談履歴を読んで」
  • 命令する: 「次のアクションを提案してください」

この「役割・データ・命令」の3点セットさえあれば、誰でも高精度な回答を引き出すことができます。

Q2. 顧客データがAIの学習に使われて情報漏洩しませんか?

A. その心配はありません。Salesforceのセキュリティ機能がデータを守ります。

前述の「セキュリティの壁」を乗り越えるために、Salesforceには「Einstein Trust Layer」という仕組みが組み込まれています。

これは入力したデータやSalesforce内の顧客情報をAI側に「学習させない」「保存させない」ための防御壁です。 AIはあくまで回答を生成するためだけにデータを一時的に参照しますが、その内容が外部に漏れたり、他社のAIモデルの学習に使われたりすることは一切ありません。

Salesforceのセキュリティ基準で、安心してAIを活用いただけます。

Q3. AIが事実と異なる回答をするのが心配です。

A. 「データ根拠」と「人のチェック」の2段構えでリスクを最小化できます。

一般的なAIはインターネット上の不確かな情報を元に回答を作ることがありますが、プロンプトビルダーは「Salesforce内の信頼できるデータ」を根拠にするため、的外れな嘘をつくリスクが格段に低いです。

また、AIの回答がいきなり自動で顧客に送信されることはありません。 基本的には担当者が画面上で確認・修正してから送信や保存を行う仕組みになっているため、万が一AIが誤った回答をしても、未然に防ぐことができます。 AIはあくまで「優秀なアシスタント」であり、最終決定権は常に人間にあるので安心してください。

おわりに:AIは「開発する」ものから「設定する」ものへ

本記事では、Salesforceのプロンプトビルダーが企業のAI活用における「データの壁」と「セキュリティの壁」をどのように乗り越えるのか解説してきました。

ここで改めてお伝えしたいのは、プロンプトビルダーは特別な専門家だけが扱えるツールではないということです。 これまで皆様がSalesforceで行ってきた「カスタム項目の追加」や「フローの作成」といった設定作業の延長線上にこのAI機能は存在しています。

プログラミングコードを書くのではなく、画面上で必要なデータを選び日本語で指示を出す。 AIは「開発会社に発注して作ってもらうもの」から、Salesforce管理者が「業務に合わせて画面上で設定するもの」へと確実に変化しています。

これからのSalesforce運用においてプロンプト設計は特別なスキルではなく、レポート作成などと同じく当たり前に使われる標準機能となっていくでしょう。

とはいえ、新しい機能の導入には運用設計や社内ルール作りなど、最初の一歩に迷うことも多いかと思います。 「自社の業務ならどこから適用するのが効果的か」「まずは小さな範囲で試してみたい」という場合は、ぜひサンブリッジにご相談ください。

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