セゾンテクノロジーのカスタマーサポートグループでは、オンプレミスのインシデント管理システムから、SalesforceのService Cloudに移行した。自社のニーズに合わせたカスタマイズも加え、問い合わせ対応の一連のプロセスをService Cloud上に集約。これにより業務効率が大幅に向上し、問い合わせの対応スピードが改善された。さらに、お客様の利便性と満足度を向上させることにも成功しており、本事例ではその背景にクローズアップする。
お客様概要
業種:システムインテグレーター
主な事業:データ連携サービス、流通サービス統合ソリューション、Fintechプラットフォームビジネス、センターマネジメントサービス
株式会社セゾンテクノロジーでは、Fintechプラットフォーム事業、流通ITサービス事業、HULFT事業という3つの事業を展開している。データ連携プラットフォームで提供しているのが25年※の歴史をもつ「HULFT(ハルフト)」だ。「HULFTは国産のファイル・データ連携ツールで、国内シェアNo.1で9,200社※に利用されています」と話すのは、株式会社セゾンテクノロジー HULFT事業部 カスタマーサービス部 カスタマーサポートグループ長の山本兼吾氏だ。HULFTは金融業・製造業を中心に幅広い業種で利用され、クラウドなどさまざまなサービスとも連携するプラットフォームへと進化し、世界43ヶ国※でビジネス展開している(※2018年7月現在)。
「クラウドの時代になり、お客様に長く製品を使っていただくためにも、丁寧で迅速なサポートをご提供できるよう日々努力しています」と山本氏は語る。
迅速な対応が求められる中、テクニカルサポートチームは問い合わせの回答調査以外の作業に時間をとられており、スピード改善が課題となっていた。インシデント管理にはオンプレミスのシステムを利用していたが、メールシステムなどと連携していなかったため、質問内容をメールクライアントに手動でコピー&ペーストする作業が必要であり、人力ゆえのオペレーションミスも発生していた。
システムの使い勝手が良くないこともあり、オペレーションミスをなくすため独自に100以上のチェック項目を設定し、その確認を徹底していた。そのため、問い合わせの回答が得られてからも、その確認作業によりお客様に返信するまでにかなりの時間を要していたのである。
「サービス向上のためお客様にアンケートをとっていたのですが、これもマニュアル操作で実施していたので手間がかかっていました」と話すのは、HULFT事業部 カスタマーサービス部カスタマーサポートグループの村上裕子氏だ。ローデータでしかログ情報を取得できず、アンケート結果のレポート作成に苦労していたという。
インシデント管理システムの契約が更新時期を迎えたこともあり、環境の刷新を検討する機会が訪れた。いくつかの製品を比較し、選ばれたのがService Cloudだった。「決め手はクラウドです。クラウドなら場所を選ばないし、管理工数も削減できると考えました」と山本氏。既にSFAとしてSales Cloudを利用していたことに加え、サービスのグローバル展開を見据えてクラウドならサポート拠点を各国に配置しやすい点、他システムとの連携が容易という点も重要な選択理由であった。
Service Cloudの導入プロジェクトにおける移行作業のサポートは、既にSales Cloudでも関わっていたサンブリッジが行った。
Service Cloudに移行して便利になったのが、まずメールでの回答作業だ。メール- to -ケースの機能によって、メールからの問い合わせは自動でService Cloudのケースに登録される。Salesforce上で回答を作成すれば、そこからすぐにメールでの返信が可能となったのだ。
クラウドなら世界展開にも対応できる点が魅力でした(山本氏)
また、Service Cloudには承認フロー機能もあり、承認プロセスも簡素化された。一連の問い合わせ対応すべてがService Cloud上で完結するので、100項目以上合った事前確認項目も今では半分以下に減らすことが可能となった。これらの改善の結果、サポート対応のスピードと質が向上した。
セゾンテクノロジーでは、業務目標として問い合わせのあった当日中の回答率を50%、翌日中の回答で70%を目指しており、Service Cloudへの移行後は当日回答率70%、翌日回答率82.7%を達成し、目標を大きく上回ることができたという(※2018年7月現在)。
社内の要望に合わせてさらなる改善を重ねた。Service Cloudの標準機能で問い合わせフォームを作ると、回答のオペレーションがメールとは別になってしまう。そこでサンブリッジに依頼し、Webフォームからの問い合わせをメールと同じ対応で返信できるようカスタマイズした。これにより、メール・Webに関わらず運用フローが統一された。また、自社データ連携ツールのDataSpider Servistaを用いて契約管理のシステムとリアルタイムに連携し、サポート契約有無が判るようにしたことで、お客様が問い合わせをした際の契約確認の手間が削減され、お客様の利便性も高まったという。
さらに、アンケートフォームもService Cloud上で作成。直近でアンケートに回答した履歴があるお客様にはアンケートを再送付しないようにするなど、柔軟で細やかな対応ができるよう、サンブリッジによる改修が行われた。これらの改善によって、お客様はマイページから自身の問い合わせ履歴を確認することができ、お客様のユーザビリティ向上にも成功している。Service Cloud導入後に実施したお客様満足度のアンケートでは、5段階評価で4.27ポイントから4.64ポイントとなり、お客様満足度が大きく向上した。現在では、電話よりもWebからの問い合わせが圧倒的に多くなり、サポートエンジニアの負担も軽減されたという。
「今後はHULFTのさらなるグローバル展開の強化に合わせ、Service Cloudを活用し海外サポート拠点も増やす予定です。また、お客様のライフタイムに合わせて1to1での対応を強化していきます。そのためには、問い合わせがあってからの対応だけでなく、お客様一人ひとりが必要としている情報をプロアクティブにご提供できるようにもしたいと思っています」と、今後の展望について山本氏は教えてくれた。これらを実現するにはService Cloudのさらなる活用が求められる。
「弊社がやりたいことに対して、私たちだけでは想定できなかった実現方法など、サンブリッジさんにご提案いただいています。逆にこちらが欲しいと思った機能に対しても、本当に必要なのかをアドバイスしていただくこともあります。こちらから依頼したことをただ実装するのではなく、最適な提案をしていただけることに感謝しています」と山本氏は語った。