マーケティングオートメーション担当者に必要なスキルセットとは(第5回)

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マーケティングオートメーション担当者に必要なスキルセットとは(第5回)

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マーケティングオートメーション(以下MA)担当者に必要なスキルについて解説する連載第5回目の本日は「コミュニケーション能力・調整能力」について説明します。

「スキル」というと実務的な知識や技術のことをイメージしがちですが、「コミュニケーションスキル」と言うように人間行動に関する能力もスキルとして含まれます。(注1)

ほとんどすべての業務において「コミュニケーション能力・調整能力」が不可欠であることは言うまでもありません。
なぜ今回MA担当者に必要なスキルセットの一つとしてわざわざ取り上げたかというと、MAの導入・運用では、マーケティング部門、営業部門だけでなく、法務部門、IT部門など、複数部門との調整が必要になるため、MA担当者のコミュニケーション能力や調整能力が非常に重要であるからです。

実際、弊社がご支援させていただいている企業様でも、MA導入時に部門間での調整がうまくつかず、計画が後ろ倒しになってしまったり、本来やろうとしたことができなかったというようなことがこれまで何度もありました。当然ながら導入からつまずくことは避けたいものです。
そこで本日は、①営業部門、②法務部門、③IT部門の3部門について、MA導入時にMA担当者と各部門との間でどのようなやり取りや調整が必要になるのか代表的な例を挙げてご説明いたします。

1. 営業部門

MAに向けた取り組みを開始する際に多くの企業で見受けられる問題の一つが、営業が自分の見込客をリードデータとして提供することを躊躇するという問題です。
育成対象となるリードデータが少なければMAで十分な結果を出すということは難しいと言わざるを得ません。
しかし、営業の立場でみると、自分が苦労して獲得した見込み客であるため他人に共有したくないという心理や、これまでのやり方を変えたくないという心理が働くなど、営業自身が所有する見込み客データを共有することに抵抗感を持たれることが珍しくありません。
このような事態を避けるためには、見込客をMAで育成することのメリットをしっかりと説明し、MAで実現しようとしている取り組みが営業のためであるということを十分に理解してもらうことが重要です。

また、育成して渡した見込客の反応を営業からフィードバックしてもらえないと、MAでの育成が適正であったかを評価し、改善することができません。
最近ではCRMやSFAなどのシステムを活用して営業活動の履歴を管理している企業も増えてきています。しかし実際の現場では、営業がお客様とコンタクト後にステータスの変更や履歴の入力をしてくれないという課題を抱えている企業も多くあります。
入力率が低い原因として想定されることは、なぜコンタクト履歴を残すことが重要なのか理解を得られていなかったり、営業が入力を負担と認識しているケースです。

これらの状況を改善するため、営業の責任者や現場の担当者へコンタクト履歴を入力することの必要性を説明したり、ときには営業にとって無理のない業務プロセスを構築するため現在の業務プロセスを見直すということまでMA担当者には求められます。
そのためには普段から円滑なコミュニケーションを図り、営業のことやその業務プロセスをよく理解していることが重要となります。

2. 法務部門

MA運用ではメールアドレスや名前などの個人情報を使ったマーケティングを行うため、個人情報の取り扱いや情報の発信には細心の注意を払わなければいけません。そのため、MA導入前にはプライバシーポリシーやコンプライアンスの確認は必須事項です。
弊社がご支援させていただいた案件でもMA導入のために何ヶ月も前から準備をしてきて、いざ運用を開始するまさにその前日に法務部門から指摘が入り、運用開始が延期になるという経験をしたこともありました。
法務部門への必要な確認と調整はMA導入が決まり次第できるだけ早い段階で行うことが望ましいといえます。

3. IT部門

MA担当者のスキルによって程度は異なりますが、MA導入や運用時には、既存システムとの連携、データの取り扱い、デザインテンプレートの作成など、技術的な分野で情報セキュリティやウェブに精通した担当者の援助が必要になります。
本日は代表例としてMA導入時のメールのデリバリティ(到達精度)を向上させるための設定を例に説明いたします。

技術的な詳細は割愛しますが、クラウドに設置されたMAツールからメールを配信するということは、お客様のメールサーバーとは別の環境からメールが配信されるということです。そのため、受信者のサーバー設定によっては、配信したメールがなりすましメールや迷惑メールとみなされ見込客にメールが届かないというようなケースがしばしば発生します。これを防ぐために、配信されたメールがお客様のメールであることを証明するための対策が必要となります。
上記の対策はお客様のサーバーに設定をする作業となりますので、サーバー管理者に作業を依頼する必要が出てきます。企業によっては設定が不要の場合もありますので、詳細はIT部門の担当者に確認すると良いでしょう。
設定をするために必要な情報は何か、いつ設定が完了するかなど、運用開始に遅れが出ぬよう調整や打ち合わせは事前にしっかり行うことが重要です。

いかがでしたでしょうか。本日挙げた例はMAを活用したマーケティング・営業活動の中で日常的に発生するコミュニケーションのほんの一部です。
自社内でのやり取りや調整に加えて、外部の協力会社との連携ということも重要になってくるでしょう。
専門的な分野でのやり取りや調整が難しいと予想される場合には、弊社コンサルタントが代行することも可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

次回はMA担当者に必要なスキルセットの4つ目「論理構成力」について解説いたします。

(注1)Sanseido Word-Wise Web http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/topic/10minnw/014skill.html

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