昨年の「Dreamforce 2025」において、CRMとAIが融合した次世代のビジネスモデル「Agentic Enterprise」のビジョンがMarc Benioff CEOより示されました。

Dreamforce 2025 メインキーノート(サンブリッジ社員撮影)
AIは「生の知能」を競うフェーズを終え、ビジネスの現場で「実行」を担うフェーズへと移行してきています。これからの企業が目指すべきは、単なる「AI導入」ではなく、AIが自律して業務を完結させる「エージェント企業(Agentic Enterprise)」への変革です。
本記事では、このエージェント企業を実現するための基盤となるSalesforce最新アーキテクチャを紐解き、これからのビジネスを支えるシステムの未来とSlackが担う真の役割について考察します。
尚、本記事はSalesforce公式ブログなどの信頼できる情報を基にした考察であり、Salesforce社公式の見解でない点についてあらかじめご承知おきください。
最新のSalesforceアーキテクチャとは?
Salesforce公式「The 360 Blog」の2月に公開された記事『Welcome to the Enterprise: It’s Time to Work』で、Salesforceが掲げるエージェント企業のアーキテクチャについて、AgentforceのEVP(Executive Vice-President)& GM(General Manager )のMadhav Thattai氏より解説されています。

参照元:The 360 blog『Welcome to the Enterprise: It’s Time to Work』を基に当社作成
弊社サンブリッジはSalesforce認定パートナーとして、セールスフォース・ジャパンの社員の方ともお話をする機会が多くあるのですが、社員の方からも上記をまだ世に出たばかりの最新アーキテクチャとして紹介いただきましたので、まだセールスフォース社内においても公開されたばかりの新しい情報と言えるでしょう。
Salesforceが描く次世代のエンタープライズ・アーキテクチャは、4つの階層で構成されています。 まずはAIエージェントを効果的に運用するために必要な4つのシステム階層について解説します。
エージェント企業を支える「4つのシステム層」
Salesforceが描く「エージェント企業」は、単一のAI機能で成り立つものではありません。最新のアーキテクチャは、以下の4つの階層(System)が密接に連携することで、AIを「チャットボット」から「自律した働き手(エージェント)」へと進化させています。
1. System of Engagement:Slack
顧客や従業員が、実際にAIエージェントとやり取りをする「接点」です。 ユーザーが使い慣れたチャネルを通じて、シームレスにエージェントの支援を受けられるインターフェース層を指します。
2. System of Agency:Agentforce Customer &Employee Agents
知能を「行動」に変えるエンジンの役割を果たします。単なる回答生成ではなく、AIが自律的にワークフローを起動し、レコードを更新し、組織を跨いでコラボレーションを行いタスクを完結させます。 エンタープライズ領域では、ガバナンスとオブザーバビリティ(可観測性)が組み込まれていることも不可欠です。エージェントには予測可能で、コンプライアンスを遵守し、安全な振る舞いが求められます。
3. System of Work:Cusotmer360
Salesforceが25年にわたり提供してきた、営業(Sales)、サービス(Service)、マーケティング(Marketing)などのアプリケーション群です。これらは各部門や業界に合わせて最適化・パーソナライズされており、信頼された業務プロセスが存在しているからこそ、エージェントは即戦力として機能します。
4. System of Context:Data 360
AIが「何をすべきか」を正しく判断するためには、広範かつ正確な文脈が不可欠です。この役割を担うのがData 360(旧Data Cloud)です ここでは、CRM内の構造化データに加え、メール、PDF、商談の録音といった「非構造化データ」を含むあらゆるビッグデータがリアルタイムで統合されます。AIエージェントはこの膨大なデータを「コンテキスト(文脈)」として参照することで、推測に頼らない、事実に基づいた的確なアクションを選択できるようになります。
Slackが担う「Agentic OS」としての真の役割
注目すべきは、この4層構造においてSlackがビジネスのフロントエンドとして中核的な役割を果たすと定義されたことです。
Slackはチャットベースのコミュニーケーションツールから、AIエージェントやCRMデータ・業務自動化機能などを統合した「Work OS(オペレーティングシステム)」、そして現在はビジネスパーソンが使うあらゆるアプリケーションを下支えする「Agentic OS」として位置づけられ、進化を続けてきました。 すべての業務の入り口としてSlackを位置付け、Slackからすべての仕事を始める、すべてのアプリをSlackから呼び出して利用する。そのような世界がSlackの未来として描かれています。 (参照:Salesforceブログ『Slackの「最新」を知る9つの質問。「Slack is Agentic OS 」ってなに?』)

サンブリッジ社員も現地参加したDreamforce 2025ではSlackが「Agentic OS」としてCRMのフロントエンドを担う中核プラットフォームになることが強調された (参照:Rewa Tech『Dreamforce 2025 現地レポートDay1』)
従来のSlackは「人間同士の対話」の場でしたが、これからは「人間とAIエージェントが同じチャンネルで協働する場」となります。 エージェントは、裏側の「System of Context(Data 360)」や「System of Work(Customer360)」から必要な情報を引き出し、「System of Agency」を通じて業務を遂行します。そして、高度な判断や承認が必要な際、Slackを通じて即座に人間にコンタクトします。 人間はSlackという「OS」の上でエージェントからの報告を受け、意思決定を下す。このシームレスな融合こそが、ビジネスの停滞を排除する鍵となるでしょう。
AIは「アウトプット」から「アウトカム」へ
Slackがビジネスのフロントエンドとして中核的な役割を担うことになった一方で、Salesforceは近年Herokuの新機能開発の中止やQuipの廃止など、AgentforceやSlackへの投資を加速するために製品ポートフォリオの整理も進めてきました。
この最新アーキテクチャへの移行は、AI活用の目的をこれまでの「出力(Output)」から「成果(Outcome)」へと変えることを意味します。
これまでのAI活用の多くは「どれだけ多くのメールを書いたか」「どれだけ早く回答したか」といった「アウトプット(出力)」に主眼が置かれていました。しかし、自律型エージェントを備えた企業が目指すのは、ビジネスにおける「アウトカム(成果)」です。
- リードの成約率向上
- 顧客トラブルの自己解決率の劇的な改善
- 事務プロセスの完全自動化
これらは、データと文脈(Context)、そして行動(Agency)が密結合されたプラットフォームによって初めて実現することができます。 AIが単に言葉を生成する段階を終え、ただの「アシスタント」から、ビジネスの結果に責任を持つ「エージェント(代理人)」へと転換しつつあります。SalesforceはAIが実質的な価値を創出する「働くAI」の時代へと、企業のあり方をアップデートしようとしています。
サンブリッジの視点:ビジネスを「自動運転」へと導く伴走者として
最新のアーキテクチャが示す「エージェント企業」への変革は、一朝一夕に成るものではありません。基盤となるデータのクレンジング、自律的なワークフローの設計、そしてSlackをただのコミュニーケーションツールで終わらせず「Agentic OS」として現場に定着させるためのUXデザインが必要です。
株式会社サンブリッジは、日本初のSalesforce認定パートナーとして、SalesforceとSlackの両輪において、長年お客様のビジネス変革を支援してきました。 「テクノロジーで仕事のあり方を変える」というミッションのもと、最新のアーキテクチャを企業の武器へと変えるための戦略策定から実装まで、伴走型でサポートしております。
Salesforce製品のライセンス販売から導入・活用・開発支援まで幅広いメニューを取り揃えておりますので、何かお困りごとがあればサンブリッジにぜひお気軽にご相談ください。



