「CTIの保守期限が近い」
「電話対応の内容をSalesforceに手入力していて、オペレーターの負担が大きい」
こうした課題をもつコールセンターで検討が進んでいるのが、AWSのクラウド型コンタクトセンター「Amazon Connect Customer」とSalesforceの連携です。
結論から言うと、Amazon Connect CustomerとSalesforceは、Salesforce公式の連携機能「Salesforce Voice(旧 Service Cloud Voice)」を使えば、独自の開発なしで連携できます。連携すると、電話対応がSalesforceの画面内で完結し、顧客情報を使った電話の振り分けや、対応履歴の自動作成ができるようになります。
本記事では、Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携でできること、連携方式の違いと選び方、費用の考え方を解説します。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携とは
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携とは、クラウド型のコンタクトセンターとCRMをつなぐことで、電話対応と顧客情報の管理を一体化させることです。ここでは、それぞれの概要とAmazon ConnectとAmazon Connect Customerの関係、従来のPBXやCTIとの違いを解説します。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの概要
Amazon Connect Customerは、AWSが提供するクラウド型のコンタクトセンターサービスです。PBX(構内交換機)やサーバーを購入せずに、電話・チャット・メールなどの窓口を構築できます。料金は通話時間などに応じた従量課金で、AIによる文字起こしや要約、応対支援の機能も備えています。
Salesforceは、問い合わせ(ケース)や顧客情報、対応履歴を管理するカスタマーサービス向けのCRMです。
この2つを連携すると、「電話をつなぐ仕組み」と「顧客情報を管理する仕組み」が1つになり、オペレーターはSalesforceの画面だけで電話対応から記録までを行えるようになります。
Amazon ConnectとAmazon Connect Customerの違い
2026年4月、Amazon Connectは、顧客対応・サプライチェーン・採用・医療の4つの製品からなるファミリーになりました。従来の「Amazon Connect」が提供してきたコンタクトセンターの機能は、このうちの「Amazon Connect Customer」として提供されています。
| 製品名 | 対象の業務 |
|---|---|
| Amazon Connect Customer | コンタクトセンター・顧客対応 |
| Amazon Connect Decisions | サプライチェーン |
| Amazon Connect Talent | 採用 |
| Amazon Connect Health | 医療 |
Salesforceと連携して電話やチャットの対応に使うのは、Amazon Connect Customerです。本記事では、以降「Amazon Connect Customer」と表記します。
出典:Amazon Connect Customer とは?エージェンティック AI ソリューションの最新アップデート – 2026 年 4月(AWS)
既存のPBX・一般的なCTIとの違い
Amazon Connect CustomerとSalesforceを連携するCRM連携型と、従来のPBX(構内交換機)、CRMと分かれたCTIツールと比べると、違いは次のとおりです。
| 比較項目 | 既存のPBX(構内交換機) | 一般的なCTI+独立したCRM | CRM連携型 |
|---|---|---|---|
| オペレーターの画面操作 | 電話とPCを別々に操作 | 複数のタブを切り替え | Salesforceの画面内で完結 |
| CRMとの連携 | 不可 | 開発が必要なこともある | Salesforce Voiceで開発なしに連携 |
| 顧客情報のIVR・振り分けへの活用 | 機能がなし | 顧客情報の参照不可 | 顧客データを条件に振り分け可能 |
| 対応後の後処理 | 情報が残らない | CRMにすべて手入力 | 対応履歴・ケースを自動作成 |
| AIの拡張性 | 不可 | ツールが分かれているため限定的 | AWSのAIとAgentforceを組み合わせ可能 |
従来や一般的なCTIとは異なり、CRM連携型では電話対応と顧客データが1つの画面・1つの仕組みにまとまるため、AIが顧客情報を使えるようになります。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携でできること
着信から記録までの流れは、次のようになります。

- 着信:IVR(自動音声応答)がSalesforceの顧客情報を参照する
- 自動振り分け:顧客情報をもとに、条件に合う担当者へ電話をつなぐ
- 顧客情報の表示:通話開始と同時に、顧客情報と過去の対応履歴を画面に表示する
- 応対:通話をリアルタイムで文字起こしとAIが回答の候補を表示する
- 自動記録:コールログやケースを作成し、通話録音・要約を顧客情報に紐付ける
このように、着信から記録までの各段階で、Salesforceの顧客情報とAmazon Connect Customerの機能が組み合わさって動きます。ここからは、この流れを支える機能に、クリックでの発信やAIエージェントによる一次応対を加えた6つの機能を、1つずつ解説します。
通話開始と同時に顧客情報を自動表示
着信と同時に、Salesforceに登録された顧客の名前や過去の対応履歴が画面に表示されます。オペレーターは相手を確認する手間なく、履歴を踏まえた応対をすぐに始められます。
ワンクリックで発信(クリック・トゥ・コール)
Salesforceの顧客画面にある電話番号をクリックするだけで発信できます。番号の入力ミスがなくなり、折り返し電話までの時間を短縮できます。
コールログ・ケースの自動作成と通話録音の紐付け
通話が終わると、コールログがSalesforceの活動履歴に自動で記録され、必要に応じてケースも作成されます。通話録音もSalesforceの顧客情報に紐付くため、後から内容を確認できます。
リアルタイム文字起こしとAIによる回答候補の提示
通話の内容はリアルタイムでテキスト化され、AIが会話に合ったFAQや回答の候補を画面に表示します。新人のオペレーターでも、ベテランに近い応対がしやすくなります。
Salesforceの顧客情報を使ったIVR・ルーティング
自動音声応答(IVR)がSalesforceの顧客情報を参照し、顧客の属性や契約の状況に応じて、適切なオペレーターへ自動で振り分けます。
たとえば「VIP顧客は専任担当へ」「購入から30日以内の顧客は導入サポート窓口へ」といった振り分けが可能です。一般的なCTIでは難しい、顧客データを使った振り分けができる点が、Salesforceと連携する大きな利点です。
AIエージェントによる一次応対と有人オペレーターへの引き継ぎ
Amazon Connect CustomerのAIエージェントやSalesforceのAgentforceを使うと、よくある問い合わせにはAIが自動で応答し、複雑な問い合わせだけを有人のオペレーターに引き継げます。
Amazon Connect CustomerとSalesforceを連携する5つのメリット
Amazon Connect CustomerとSalesforceを連携すると、顧客の体験とオペレーターの業務の両方が変わります。ここでは、代表的な5つのメリットを紹介します。
① 顧客を待たせずに、履歴を踏まえた応対ができる
通話の開始時点で顧客情報と過去の対応履歴がわかるため、顧客に同じ説明を繰り返させることがなくなります。
② 応対時間と後処理時間を短くし、入力漏れを防げる
対応履歴の記録やケースの作成が自動化されるため、通話後の後処理(ACW)にかかる時間を短くできます。手入力が減ることで、記録漏れや入力ミスも防げます。
③ Salesforceの画面で業務が完結し、教育期間を短縮できる
電話とCRMの画面を行き来する必要がなくなり、操作を覚える負担が軽くなるでしょう。新人オペレーターの教育期間の短縮にもつながります。
④ 従量課金でシステム費用を最適化できる
Amazon Connect Customerは使った分だけの従量課金です。繁忙期と閑散期で問い合わせ件数が変わる窓口でも、利用量に合わせて費用を無駄なく抑えられます。
⑤ 在宅勤務や複数拠点、BCPに対応しやすい
クラウドのサービスのため、PCとネットワーク環境があれば在宅でもオフィスと同じように業務ができます。災害時にも拠点を分散して運用を続けやすくなるだけでなく、採用の課題も解消できるでしょう。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携方式
Amazon Connect CustomerとSalesforceを連携する方法には、Salesforce公式の連携機能「Salesforce Voice」を使う方式と、AWSが提供するCTI Adapterを使う方式があります。それぞれの特徴と違いを整理します。
【Salesforce公式】Salesforce Voice(旧 Service Cloud Voice)
Salesforce Voiceは、Salesforceが提供する電話とCRMの連携機能です。Amazon Connect CustomerとSalesforceを、独自の開発なしで連携できます。サンブリッジでも、Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携にはSalesforce Voiceの利用をおすすめしています。
Salesforce Voiceには、契約の形が2種類あります。
バンドル型
SalesforceからAmazon Connect Customerの利用分を含むプランを購入する形です。ユーザー単位の月額で、通話分数(750分・2,000分・5,000分)を含むプランがあり、年間契約が必要です。契約と請求をSalesforceにまとめられる一方、Salesforceが管理するAWSアカウント上で動くため、組み合わせられるAWSのサービスに制限があります。
BYOA(Bring Your Own Amazon Connect)
自社のAWSアカウントで契約したAmazon Connect Customerを、Salesforce Voiceに統合する形です。Amazon S3やAWS Lambda、Amazon Bedrockなど、他のAWSのサービスと自由に組み合わせられますが、SalesforceとAWSのそれぞれと契約・管理が必要です。
【AWSが提供】CTI Adapter
AWSが提供する連携の方式として、Amazon Connect CTI Adapter for Salesforceもあります。SalesforceのAppExchangeで提供されるパッケージと、AWS側のサーバーレスアプリケーションを組み合わせて連携する方式です。Salesforce Voiceのライセンスを追加しない構成をとれる一方、AWS側での構築や保守が必要になります。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携方式の比較
ご紹介した連携方法のまとめとしては以下をご確認ください。
| 比較項目 | Salesforce Voice(バンドル型) | Salesforce Voice(BYOA) | CTI Adapter |
|---|---|---|---|
| 提供元 | Salesforce | Salesforce | AWS |
| Amazon Connect Customerの契約先 | Salesforce | AWS(自社アカウント) | AWS(自社アカウント) |
| 課金 | ユーザー単位の月額(通話分数込み) | Salesforceのライセンス+AWSの従量課金 | AWSの従量課金(Salesforce側の利用条件は要確認) |
| 他のAWSサービスとの組み合わせ | 制限あり | 自由に組み合わせ可能 | 自由に組み合わせ可能 |
| 構築の負担 | 小さい | 中程度 | AWS側の構築・保守が必要 |
| 向いている企業 | これから導入し、契約をシンプルにしたい | AWSを活用して機能を広げたい | 既存のCTI Adapter環境を使い続けたい |
自社の状況に合わせて連携方式を選ぶようにしましょう。以降では、Salesforce Voiceを使った連携について詳しく紹介していきます。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携方式の選び方
Salesforce Voiceを使う場合、バンドル型とBYOAのどちらを選ぶかは、次の4つの観点で判断します。
- AWSアカウントを自社で管理しているか
- Amazon S3やAWS Lambda、Amazon Bedrockなど、他のAWSのサービスと組み合わせて機能を広げたいか
- すでにAmazon Connect Customerの環境(問い合わせフローや設定)があるか
- 契約・請求・サポートの窓口をSalesforceにまとめたいか
これから導入し、契約や運用をシンプルにしたい場合はバンドル型、すでにAmazon Connect Customerを使っている場合や、AWS側で通話データの活用やAIの組み込みを進めたい場合はBYOAが候補になります。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携にかかる費用の考え方
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携にかかる費用は、契約の形や利用量によって変わります。ここでは、費用を構成する要素と、試算するときのポイントを解説します。
費用を構成する3つの要素
費用は、大きく次の3つで構成されます。
Salesforce側のライセンス
- Service Cloudのライセンスに加え、Salesforce Voiceのプランが必要
- バンドル型の場合は、ユーザー1人あたり月額9,000円〜24,000円(通話分数により異なる、年間契約)のプランが公開(2026年10月時点)
Amazon Connect Customerの利用料(BYOAの場合)
- 通話時間やチャットの件数に応じた従量課金
- 音声は1分あたり0.038米ドルで、AI機能の利用料が含まれる
- 電話番号や通話料は別途発生(2026年10月時点)
構築・連携の費用
IVRや振り分け条件の設計、Salesforceの設定、電話番号の移管、テスト、オペレーター教育などにかかる費用
費用を試算するときのポイント
従量課金のため、費用は「席数」ではなく「通話時間」で大きく変わります。月間の通話件数と平均通話時間、チャットの件数をもとに試算しましょう。日本の電話番号の料金や通話料は、AWSの料金ツールや見積もりで確認が必要です。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携を進める5ステップ
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携は、現状の整理から稼働後の定着まで、次の5つのステップで進めます。各ステップで行うことを順に解説します。

STEP1:ご相談・ヒアリング
現在のCTIやPBX、電話業務の流れ、Salesforceの利用状況を整理し、導入のゴールを決めます。どの業務を改善したいのかを明確にしておくことが、その後の設計の基準になります。
STEP2:要件定義・設計
契約の形(バンドル型かBYOAか)、IVRの案内や振り分けの条件、Salesforceに記録する項目を設計します。今使っている電話番号(0120・0800・03など)をそのまま使う場合は、番号の移管の計画もこの段階で立てます。電話番号の扱いは「Amazon Connect導入でつまずきやすい電話番号取得・移管のポイント」で詳しく解説しています。
STEP3:設計・実装
Amazon Connect CustomerとSalesforceの設定、連携の構築を行います。既存のSalesforceの設定を壊さないよう、影響範囲を確認しながら進めましょう。
STEP4:テスト・リリース
着信・発信、振り分け、記録の作成までを検証し、本番環境へ切り替えます。電話番号の移管がある場合は、切り替えと切り戻しの手順も事前に確認しておきます。
STEP5:運用定着化
稼働後は、オペレーターの操作の定着を支援し、問い合わせフローや振り分け条件を改善していきましょう。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携の5つの注意点と対策
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携では、システムの設定だけでなく、電話番号や通信環境、現場への定着などでつまずきやすい点があります。事前に押さえておきたい5つの注意点と対策を紹介します。
① 既存のSalesforce環境の設計との干渉
長く使っているSalesforceには、独自の項目や自動化の設定が多くあります。連携の設定がこれらと干渉しないよう、現状の設定を把握したうえで設計しましょう。
② 電話番号の移管にかかる期間
既存の電話番号を移管する場合、申請から切り替えまでに一定の期間がかかります。リリース日から逆算して、早めに手続きを始めることが重要です。
③ ネットワークと端末の要件
通話の品質は、ネットワークの帯域やヘッドセット、PCの性能に左右されます。在宅勤務のオペレーターがいる場合は、自宅の通信環境も確認しておきましょう。
④ Salesforceの権限とコールセンターの設定
オペレーターや管理者ごとに、Salesforceの権限やOmni-Channel(作業の振り分け機能)の設定が必要です。役割ごとに必要な権限を整理してから設定します。
⑤ 新しい画面への現場の抵抗と定着化
システムを導入しても、現場で使われなければ効果は出ません。操作研修やマニュアルの整備、稼働後の問い合わせ対応など、定着までの支援を計画に含めておきましょう。
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携事例
CTIのシステムコストを約3割削減した金融・保険業界のT社の事例を紹介します。
課題
- ユーザー数に応じて課金される既存のCTIツールの費用が高かった
- 通話内容の要約がオペレーターの負担になっており、AIの活用や将来の拡張にも課題があった
- IVRの機能が足りず、目指す問い合わせの流れを実現できなかった
解決策
- 従量課金のAmazon Connect CustomerへCTIをリプレイス
- Salesforce Voiceにより、開発なしでSalesforceと連携
- Agentforce Serviceの自動要約で、通話後の記録作業を効率化
- Amazon Connect CustomerでIVRを実装し、オペレーターへの自動振り分けを実現
- 通話データの処理には、Amazon S3、Amazon Kinesis、AWS Lambda、Amazon EventBridgeを組み合わせて活用
導入効果
- CTIのシステムコストを約3割削減
- 問い合わせ後の後処理業務を効率化
- IVRによる応対品質の向上と、オペレーターへの自動振り分けを実現
Amazon Connect CustomerとSalesforceのよくある質問(FAQ)
Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携について、検討段階でよくいただく質問とその回答をまとめました。
Q1. Salesforce Voice(旧 Service Cloud Voice)とCTI Adapterの違いは何ですか?
Salesforce VoiceはSalesforceが提供する公式の連携機能で、独自の開発なしでAmazon Connect CustomerとSalesforceを連携できます。CTI AdapterはAWSが提供するパッケージで、AWS側の構築・保守が必要です。サンブリッジでは、Salesforce Voiceでの連携をおすすめしています。
Q2. すでに使っているAmazon Connect Customerの環境を生かしてSalesforceと連携できますか?
できます。Salesforce VoiceのBYOAの形を選ぶと、自社のAWSアカウントで使っているAmazon Connect CustomerをSalesforceに統合できます。
Q3. AgentforceとAmazon Connect Customerを組み合わせることはできますか?
できます。事例でご紹介したT社でも、Agentforce Serviceの自動要約を活用しています。2026年9月には、Agentforce VoiceとAmazon Connect Customerの連携も発表されました。
まとめ
Amazon Connect CustomerとSalesforceは、Salesforce公式の連携機能「Salesforce Voice」を使えば、独自の開発なしで連携できます。連携すると、次のことが実現できます。
- 通話開始と同時に顧客情報を表示し、履歴を踏まえた応対ができる
- 対応履歴やケースを自動で作成し、後処理の時間を短くできる
- Salesforceの顧客情報を使って、IVRで適切な担当者へ振り分けられる
- AWSのAIやAgentforceと組み合わせて、応対を自動化・効率化できる
契約の形はバンドル型とBYOAから選べます。既存のSalesforce環境との干渉や電話番号の移管、現場への定着まで含めて計画することが、導入を成功させるポイントです。
サンブリッジは、SalesforceとAWSの両方の知見をもとに、Amazon Connect CustomerとSalesforceの連携を、ご相談から運用の定着まで支援します。
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